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人類種の天敵が一年戦争に介入しました
第23話
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男だ。

 ウラガンは内心で吐き捨てた。ウラガン自身の思いだけで言えば、マ・クベに通信を渡したくはない。現在のマ・クベの抱える仕事量は、一頃の殺人的な質と量に比べれば無いも同然だ。そしてこの状態は本国からの補充が届くまで持続する。司令官の健康にも留意する副官としては、この期に、補給が到着するまでの数日間は養生――休養ではない。養生である――していただきたい、と考えている。なのに問題児が通信を入れてきたのだ。しかも人事という地雷案件。

「マ・クベ司令、独立重駆逐戦闘団のレンチェフ大尉から通信が入っています」

 だが、残念なことにウラガンは司令官ではなく副官だった。副官は司令官への取り次ぎ役だが、取り次ぎ役であるが故に、取り次ぐだけということがままある。多忙な司令官のスケジュールと話の軽重を合わせて勘案し、取り次ぐ順番を決めるのが仕事であり、もちろん副官の一存で却下できるものもあるが、残念なことに独立重駆逐戦闘団についてはそうではない。司令官ではなく副官でしかないウラガンに、マ・クベに繋がないという選択肢を選ぶことは出来なかったのだ。

 ウラガンの仏頂面から放射される、さっさと切り上げて休んでください、という意思を努めて無視しマ・クベはレンチェフとやりとりをする。

 その結果。

「ウラガン、幕僚を招集する。議題はオデッサ基地への新型モビルスーツの製造ラインの設置とそれに応じた施設の拡張だ。技術者については今日の深夜に到着する予定なので、明日以降で調整してくれ」
「わかりました」

 頷くなりウラガンは高速で端末を操作し始めた。このウラガンという男、愛想の欠片もなく、頭が鈍いのではないかと思わせる外見に反して、非常に仕事が出来る。マ・クベ中将ほどに高級将校ともなれば副官が複数、秘書や事務官が鈴なりになるのが通例だが、マ・クベはマ・クベで身の回りは一流品で固めたい男であり、それは側近の人事にも及ぶ。その無意味に厳しい人物鑑定眼が選び抜いた人材がウラガン中尉なのだ。その事務処理能力は伊達に一人で副官を努めてはいない。判断にクリエイティブな要素が全くないのが難と言えば難だが、当たり前で無難な意見しか口にしないということは、ある意味で一つの目安ともなる。口も忠誠も固く、傍に置く副官としてこれ以上の人間はいない。
 なおマ・クベ中将の信頼を独占しているウラガン中尉も、マ・クベの昇進と共にウラガン大尉になる予定だ。同時に主席副官となり、部下として次席副官や待望の事務官が配置される。マ・クベが身辺に一流品しか置きたくないので、ウラガンの下に置くしかないのだ。中尉では階級の上で難があったが、昇進することでそれも解消される。今いる下士官クラスのスタッフと新参の士官、下士官のバランスや権限の問題もあるだろうが、そこは実際の人品を見極めてからの
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