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人類種の天敵が一年戦争に介入しました
第23話
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精神が平衡を取り戻したところに北米制圧完了の報であるから、ウラガンとしてもその心中は察して余りある。
 だが、しかし。
 いささか浮かれすぎではないだろうか、とウラガンは考える。確かに北米制圧完了の報は喜ぶべきこと。しかし、影に日向に尽力してきたマ・クベを見てきたウラガンにとっては、それは当然の勝利である。もともと血色の良くない顔を土気色にし、痩せた身体を更に窶れさせ、寝食を惜しんで戦力をかき集め、血を吐くようにしてそれを手放した。そんなマ・クベの姿を、ウラガンは隣で見てきたのだ。マ・クベ中将以外の誰にこの偉業を成し得よう、と思うものの、常のマ・クベであれば

「当然の勝利だ」

 の一言で終わらせていた筈だ。あるいは何も言わないか。とにかく、主が軍事について一喜一憂しているという事実が、ウラガンにとっては信じがたい光景だ。
 一言で言うと、マ・クベ中将は余裕を失っている。少なくともウラガンの目にはそのように映る。今も一見優雅に紅茶を楽しんでいるようだが、紅茶を淹れたカップがアンティークではなく軍の備品という選択が焦りの現れだ。壺や皿は落とせば割れる。軍のカップは落としたくらいでは割れないし、紅茶は溢しても拭けば済む。落として割ることを恐れて趣味の骨董に手を出すことができていない。それほど驚くべき事態の勃発を意識している。
 ウラガンの既知の範囲で言えば、すっかり閑古鳥が鳴くようになったオデッサ基地以外には問題らしい問題はない。ならば何か自分の知らない要素が絡んでいるのでは、と考えてみれば、それはおそらく最近話題のテロリスト達だろう。これについてはマ・クベ中将自身がほとんど一人で対応しているため、副官のウラガンですら把握していないことが多いのだ。しかも優先順位が相当高いらしく、何をおいてもまずテロリスト、といった塩梅だ。おかげでウラガンの組み上げたスケジュールなどは有名無実、改められることの多いこと多いこと。
 正直、あまり、面白くは、ない。
 あるいは、急遽設立された独立重駆逐戦闘団という秘密部隊か。これを隠れ蓑にして、ずいぶんと物資や人材を動かしているようだ。
 ……そういえば、独立重駆逐戦闘団に配属された士官がいたな、とウラガンが思い出した時、司令官室に通信が入った。カップを置こうとしたマ・クベを制し、自分の執務机のスイッチを押す。

「ウラガンだ。何か」
「独立重駆逐戦闘団のレンチェフ大尉から通信です。お繋ぎしますか?」
「頼む」

 一瞬だけ画面が乱れると、通信画面に男の顔が映る。角張った顎、睨み付けるような眼差し。レンチェフだ。

「レンチェフであります。先に通達を受けました戦闘団への人員の追加派遣について、司令官閣下にお伺いたいことがあるのですが、お繋ぎしていただけるでしょうか」

――なんとも間の悪い
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