第23話
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は皆無。むしろ、地球連邦に残るから護ってくれと言われたところで護ることができないという抗いがたい現実があるのだ。それを思えば、無防備都市宣言そのものは妥協点としては悪くない。
地球連邦軍は構成国の軍隊を統合しているため、構成国独自の軍事力は極めて乏しい。二線級部隊のはずの州軍が他国の一線級すら上回り、地球連邦軍の他に潤沢な戦力を有していた旧アメリカ合衆国は例外とするべきであって、その旧アメリカ合衆国ですら自国を護りきることが出来なかったのだから、東欧の小国家群なら何をか況んや、である。いきなり離反せずに、無防備都市宣言しても良いですか? とお伺いを立ててくるだけありがたいくらいだ。
だいたい、地球連邦政府はジオン公国を独立国として認めて来なかった。そのため今次大戦を国家間の『戦争』と位置付けておらず、開戦時には法的に戦時中ではないため兵の除隊が相次ぎ戦力はスカスカ。南極条約で正式に戦時体制に移行したが、コロニー落としの影響で戦争どころではない地域が多く、再編成は遅々として進んでいない。これで構成国に向かって理想のために戦って死ねと言えるのは、人類史上初の統一政体という理念に取り憑かれているレビル中将か、面の皮が戦艦の装甲並みに厚いゴップ大将か、自国フランスが占領されるかどうかの瀬戸際にいるコリニー大将、コリニー大将のことが他人事ではないイギリス出身のワイアット中将など、超の付くタカ派か自らの権力基盤が危うくなっている人間だけである。権力の中枢にいない東欧諸国からすれば、どうぞ御勝手に、という話だ。
南極条約における外交的敗北、北米陥落という軍事的敗北が、地球連邦政府の根幹すら蝕みはじめている。そしてその双方にマ・クベは関わっている。南極条約締結の際には使節団の代表として参加し、先の北米攻略はまさにマ・クベの増援で勝てたのだ。更にはどこぞのキチガイのおかげで、敵対するはずの各自治体の首長、駐留部隊の司令官らが求めずとも寄ってくる。ジオン公国は南極条約の批准はしたが、ハーグ陸戦条約にもジュネーブ条約にも批准していない。無防備都市宣言を受け入れるも拒絶するも現地の最高司令官、すなわち地球侵攻軍総司令官マ・クベ中将の胸先三寸。
「これが笑わずにいられるものか、フッフッフ、フハハ、ハーッハッハッゲフッ、ゴホッ、ゴホッ」
独り言からの悪役三段笑いと慣れない大笑にむせかえる主を見るウラガン中尉は、心の中で嘆いた。
「……お痛わしい」
「グッフ、ゴホッ、なっ、何か、言ったか、ウラガン」
「いえ、何も」
どうやら副官は心の声が漏れてしまったようだった。ニューヤーク攻略が成ったと聞いて喜び、ガルマ大佐の乗機が撃破されたと聞いて青ざめ、下手人は所属不明のモビルスーツと聞いて泡を吹いて昏倒したマ・クベ中将だ。それから数週間が経ち、ようやく
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ