第三十六話「突然の再会」
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に暫く撫でた彼女は手を離す。一瞬名残惜しそうな表情を美九はするが士織を待たせることを思い出した様で外に出て行く彼女を笑顔で見送るのであった。
「(精々美九に正体がバレないように気を付ける事ね。まあ、封印した後も隠し通せるとは思えないけど…。士道って案外抜けているわね)」
そんな事を思いながら彼女は天宮市の中心街へと向かって行くのであった。
「…で、何でそうなったの?」
家に帰ってきた彼女を出迎えたのは若干の不機嫌な様子の美九であった。その様子から士道の女装はバレなかったのだろうと予想できると同時に何かあったのだろうと推測した。
そして結果が以下の美九の言葉の通りである。
「実は―、士織さんと天央祭一日目の最優秀賞を取った方が相手の言う事を聞くと言う内容で勝負する事になりましてー」
「?それはつまり美九がステージに立つと言う事?」
「ピンポーン!正解ですぅ。本当はゴミ虫共に私の歌を聞かせたくはないですがぁ、士織さんを手に入れ…コホン。士織さんに言う事を聞かせたくて仕方なくですぅ」
「ほとんど本心が出てたよ。…それにしてもそんな勝負、美九が圧倒的に有利じゃない。よく士織?は受ける気になったね」
「…まあ、あちらには譲れない何かがあったみたいですから」
「何か、ねぇ」
士道としても美九の霊力を封印できる機会はこれを逃せば当分ない可能性があり圧倒的に不利とは言え受ける事は必然と言えた。
「その他明日から早速皆にお願いをしてきますね。寂しいですが美亜さんは先に帰ってよろしいですよ」
「そう?なら私も当日は美九の歌を聞きに会場に足を運ぼうかしら」
「あーん。美亜さんになら何時でも私が歌ってあげますよぉ!」
「ふふ、それはまた今度ね。今日はもう遅いし、ご飯にしなきゃいけないから」
「むぅ、そうですかぁ。残念ですぅ」
美九は今すぐにでも歌いだしそうな勢いだが時間は六時を回っておりそろそろ夕食の時間であったため不承不承ながら頷く。
「(天央祭一日目は音楽がメイン。…美九に圧倒的に有利な展開で士道は何処まで食いついて来れるかな?)」
彼女は心の中でそう呟く。しかし、その声の中に士道に対する確かな興味があった事は彼女は気づくことはなかった。
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