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黄金の羊
第一章

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               黄金の羊
 チャドラーパリーン=ナツァグドルシと黄政秀、李楽生の三人は今はナツァグドルジの神託でモンゴルの大平原に来ていた。
 大平原は何処を見渡しても地平線と緑の海だけがある、その中にいてだった。李はこんなことを言った。
「いや、これがですね」
「モンゴルや」
 ナツァグドルジはその李に答えた。
「草原の国や」
「お話は聞いてましたが」
「それでもやな」
「ここは」
 本当にと言うのだった。
「凄い場所ですね」
「こんな場所そうそうないな」
 黄も周りを見回して言った。
「人も生きものも建物も田畑もない」
「人や生きものはおるで」
 ナツァグドルジは黄にも話した。
「ちゃんとな」
「いや、それでもな」
「僕等の視界にはやな」
「何もな」
 それこそというのだ。
「草原以外見えへんから」 
「それでか」
「そや、それでや」
 だからだというのだ。
「こう言うんや」
「草原以外何もないってか」
「そうな」
「そういうことか、けど実際にな」
「人はおるか」
「そや、生きものもおるわ。ただ数がめっちゃ少ないだけや」
「そんなに少ないか」
「僕等が起きた世界でおる日本の四倍でな」 
 その国土にというのだ。
「人口は三百万や、街にある程度おって」
「ウランバートルとかか」
「あそことかな」
 三人がモンゴルに最初に来た場所だ、そこから三人共馬に乗ってここに来たのだ。尚ナツァグドルジは馬は足と同じ様に操るが後の二人は乗馬は不得手だ。
「人が集まってるけど」
「それでもか」
「ここはな」
 草原はというのだ。
「ほんまにな」
「人が少ないか」
「もう殆どや」
 それこそというのだ。
「おらん、日本の四倍の国土で枢軸との戦争で領地も増えた」
「戦は惨敗やったけどな」
「それでも占領地は領土になったな」
「シベリア鉄道を境にしてな」
 その線路をだ、線路から北が枢軸領であり南が連合領と国境を定められたのだ。連合は敗れたが得るものは得たのだ。
「そうなったな」
「その分な」
「さらにか」
「遊牧民の行き来する場所が拡がったから」
「余計にか」
「人が少なくなったわ」
「成程な」
「そやからこうして草原以外何も見えんこともな」
 今の様なこともというのだ。
「ここではあるんや」
「不思議やないか」
「そや、それでな」
 ナツァグドルジはさらに話した、今度言うことはというと。
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