純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 28
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人にしかできないって事だね」
アーレスト「香辛料は、湿気と害虫と空気接触に弱い物が多く、下手な持ち運びでは数日と保たずに香りが死んでしまいます。そして、通常の保存方法と持ち運びに必要な方法では、内容が大きく変わってしまうのです」
マリア「……これから王都へ向かおうとしている教会関係者が、商人を伴わずに北方領から香辛料を持ち出すのは不自然である、と」
コルダ「そうなるね」
マリア「街の皆も、アーレストさんが大量の食糧を受け取っていたのは知っているから、そもそも教会から調味料の類が無くなる事自体がありえないんですね」
アーレスト「はい。新しく派遣されてくる担当神父に引き継ぐより他にありません。それでも、赴任してくるまでの間で多少は質が落ちてしまうでしょうが」
マリア「こういう時にこそ、私の力が使えれば良いのですが……」
……さて、気付いたかの?
何に?
香辛料が持ち運びできない、という事実に決まっておろう!
よぉく考えてみよ!
香辛料とは何か?
芳香性植物の一部を調味等、食に用いる為の物だ。
では、それが持ち運べないと何が問題なのか?
香辛料と同じく芳香性植物の一部を湯に入れて楽しむお茶も、アーレスト達には持ち運びできぬという事だ!
なんたる悲劇……っ!!
マリア達の会話でそれに気付いた我は、愕然とした。
我がこの教会で飲んでいるミントのお茶の葉は、この街の市場で買い求めた物と聞く。
ただでさえ、アーレスト達が中央教会へ向かっている間は飲めなくなるというのに。
アーレスト達が中央教会へ辿り着いても、其処にこれと同じお茶の葉が無ければ、やはり我はお気に入りのお茶が飲めないではないか!!
我は考えた。
ミントのお茶を楽しめるのは、全員が食事を終えるまでの間のみ。
ならば、少しでも長く余韻に浸りたい。
少しずつ、少しずつ。ゆっくりと、じっくりと。ちまちまちまちま、ちまちまちまちま飲み続け……やがて麗しの泉は、無情にも底を突いた。
皆の食事はまだ半ば。我のカップも、泉を湛えるのはまだ二度目。
この程度ならばと何食わぬ顔でお代わりを要求してみたが、予想通りポットを傾けて注ぐアーレストに心配の色は無かった。
安堵の息を吐いて、ちまちまちまちま、ちまちまちまちま。
しかし。
迎えた四杯目の要求時、マリアの目に不穏な影が過った。
まずい。
五杯目は必ず止められる……っ!
マリアには、人間で言う「姑」の才能が有る。
とにかく口煩いのだ。
真に我を心配しておるのも解るし、我にも良くない所が有るのは重々承知しておる。
だがな。
だが。
今後は飲めなくなると分かった
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