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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode9『家族に』
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は信じている。彼が根っからのお人よしだというのは、しばらく共に暮らしてきて嫌という程身に染みているのだ。だがそれでも、こればかりは簡単に受け入れきれない。
 ここは、本当にヒナミにとっての“帰る場所”になってくれるのだろうか。一度帰る場所だと受け止めた世界が奪われる苦しみは、二度も耐えられるものではない。それをヒナミは、かつての『一度目』で確信した。

 それが他人によってのものでも、当人によるものでも変わりはない。一度構築された“自分の世界”が崩れるさまを見るのは、もうたくさんだ。

「……すぐに受け入れられないなら、それでもいいんだ。ここには僕もいれば、マナみたいに他の家族たちもいる。怖いことでも、何でもないような事でもいいんだ、一度話してみてほしい。僕たちはヒナミがここに来た時から、ずっと君を家族だと思ってる。だからさ……」

「……?」

 少し言い淀んだように、シンが視線を落とす。言葉を探しているように考え込むと、やがて彼はヒナミの頭を撫でていた手を止めた。
 言いたい言葉は、見つかったらしい

「――そんな、寂しそうな顔をしないでくれ」

「……ぇ?」

 シンに言われて、自分の頬に手を当てる。
 寂しそうな顔を、していたのだろうか。分からない、当然だが鏡でもなければ自分の顔など自分では見れないし、そんな自覚など一切なかった。
 だが、その言葉は――寂しい、というワードは、驚くほど自然に心の中の引っ掛かりを解いていく。整理の付かなかった感情が、一気にすとんと纏まった気がした。

 そうだ。

 単純なことだったのだ、簡単なことだったのだ。どうして気が付かなかったのだろう。この胸を苛む言いようのない感情は、たったそれだけのことに過ぎなかった。

 ――“寂しかった”のだ。

 家族を失って、大好きな人たちが消え去って悲しかった、そして怖かった。でも、何よりも寂しかった。やけになって半端なつながりを断とうとしていたのも、寂しかったが故のことだった。些細なつながりでも、失われてしまうのが怖かったから。また一人になるのが嫌だったから。

 ただ、それだけの話だった。

「……ヒナミ?」

「……そっか。寂しかったんだ、ずっと」

 ぎゅっと、毛布を握りしめる。ようやく整理の付いた自分の感情に苦笑して、遥かな夜景に視線を戻した。ずっと胸の内に引っかかっていた棘が、取れたような気がした。
 ならば、己のすべきことは自然と分かってくる。この苦しい感情を別のものに変化させるためにすべきことは、即座に頭に入ってきた。

「シン」

「……?」

「わたし……ともよの、シンの、みんなの家族になれる?」

「勿論」

 当然のように頷いて見せるシンに、ヒナミが微笑む。
 これま
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