episode9『家族に』
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は信じている。彼が根っからのお人よしだというのは、しばらく共に暮らしてきて嫌という程身に染みているのだ。だがそれでも、こればかりは簡単に受け入れきれない。
ここは、本当にヒナミにとっての“帰る場所”になってくれるのだろうか。一度帰る場所だと受け止めた世界が奪われる苦しみは、二度も耐えられるものではない。それをヒナミは、かつての『一度目』で確信した。
それが他人によってのものでも、当人によるものでも変わりはない。一度構築された“自分の世界”が崩れるさまを見るのは、もうたくさんだ。
「……すぐに受け入れられないなら、それでもいいんだ。ここには僕もいれば、マナみたいに他の家族たちもいる。怖いことでも、何でもないような事でもいいんだ、一度話してみてほしい。僕たちはヒナミがここに来た時から、ずっと君を家族だと思ってる。だからさ……」
「……?」
少し言い淀んだように、シンが視線を落とす。言葉を探しているように考え込むと、やがて彼はヒナミの頭を撫でていた手を止めた。
言いたい言葉は、見つかったらしい
「――そんな、寂しそうな顔をしないでくれ」
「……ぇ?」
シンに言われて、自分の頬に手を当てる。
寂しそうな顔を、していたのだろうか。分からない、当然だが鏡でもなければ自分の顔など自分では見れないし、そんな自覚など一切なかった。
だが、その言葉は――寂しい、というワードは、驚くほど自然に心の中の引っ掛かりを解いていく。整理の付かなかった感情が、一気にすとんと纏まった気がした。
そうだ。
単純なことだったのだ、簡単なことだったのだ。どうして気が付かなかったのだろう。この胸を苛む言いようのない感情は、たったそれだけのことに過ぎなかった。
――“寂しかった”のだ。
家族を失って、大好きな人たちが消え去って悲しかった、そして怖かった。でも、何よりも寂しかった。やけになって半端なつながりを断とうとしていたのも、寂しかったが故のことだった。些細なつながりでも、失われてしまうのが怖かったから。また一人になるのが嫌だったから。
ただ、それだけの話だった。
「……ヒナミ?」
「……そっか。寂しかったんだ、ずっと」
ぎゅっと、毛布を握りしめる。ようやく整理の付いた自分の感情に苦笑して、遥かな夜景に視線を戻した。ずっと胸の内に引っかかっていた棘が、取れたような気がした。
ならば、己のすべきことは自然と分かってくる。この苦しい感情を別のものに変化させるためにすべきことは、即座に頭に入ってきた。
「シン」
「……?」
「わたし……ともよの、シンの、みんなの家族になれる?」
「勿論」
当然のように頷いて見せるシンに、ヒナミが微笑む。
これま
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ