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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode9『家族に』
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のほとんどのスペースが埋まってしまう程狭い空間で、昔は鐘でも釣ってあったのか、この高台用の小さな屋根の裏には、フックのような金具が取り付けられていた。

 だが、それも今は気にすべき事ではない。

 高い地点から見下ろす難波の街並みは、決して星のように自然的な美しさはない。だが、街灯と魔鉄ネオンが生み出す人工的な光の輝きの海は、暴力的ながらも、特有の見ごたえがあった。
 人の営みが生み出した夜景は、星々の輝きとは別ベクトルでの美しさを持つ。輝かしいその光景に目を奪われていると、不意にひゅぅっ、と強い風の流れがヒナミを撫でる。

「さ、寒……っ」

「あはは、冬場の夜だからね。ほら、これ掛けて」

 シンは脇に置いてあった箱の中から厚めの毛布を取り出すと、ばさりと覆いかぶせるようにヒナミの上へ広げる。頭から毛布をかぶったヒナミはしばらく外に顔を出そうともがいてから、抜け道ができるよう端を持ち上げたシンの助けも借りて脱出に成功する。かなり大きな毛布だった、ヒナミが丸々くるまってもまだまだ余裕を残している。
 本来は大人用のサイズなのだろう、ただでさえ幼い上、魔女であるヒナミにはやはりオーバーサイズに過ぎる。まあその余った布を重ねた分、暖かくはあるのだが。

 ほぅ、と息を吐けば、白い息が漏れていく。冬を感じさせる突き刺すような寒さは、一年の終わりを連想させた。

「……シンは寒くないの?」

「うん、あんまり寒いとか暑いとかは、僕には分らないんだ」

「それも、オーバーワールドの影響?」

 ヒナミの問いかけに、シンは「多分」と一つ頷く。

 自らが鬼に見えるというオーバーワールド、それに付随する痛覚、寒暖の感知機能の麻痺。更には高頻度で発生するという、例の歪む世界による自傷現象。
 自らが鬼に見える、というのは分かる。だが痛覚、寒暖の感知が出来ないということ。そして自傷現象に関してはまるで理解できない。

 何故鬼になったら痛覚や温度を感じなくなるのか、自傷現象に関してはそれこそ意味不明だ。OWを発現した要因たる何かがヒントになっているのだろうが、それをヒナミが知る由もない。

「シスターと、何かあった?」

「……え?」

 考え事の横からふいに掛けられたその問いに、思わず硬直してしまう。

 焦げ茶色の瞳は、依然夜景の輝きを受けて光を宿している。視線もそちらに向いたまま変化なく、何でもない事のように、“そういえば気になってたんだけど”程度の感覚だったので、一瞬戸惑ってしまった。

「なん、で?」

「夕飯の時、あからさまに避けてたじゃないか。嫌でもわかるさ」

「ぁ……ぅ」

 あまりにも心当たりがありすぎて、口を閉ざすしかなかった。
 まだ少し心の中で整理がつけ切れて
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