episode9『家族に』
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てる。手は大きいし爪もナイフみたいに長ければ、歯も肉食獣みたいに尖ってる。それと……」
「……それと?」
「……いや、なんでもない。後はそうだね、たまにすっごくおなかが空く時がある、くらいかな?何年か前から、ずっとこうなんだ」
何か踏みとどまるように言葉を噤んだ彼は、そう言って困ったような笑顔で笑う。しかし、何年か前からということは先天性の……つまり、生まれつきではないという事だ。
後天的に発現したオーバーワールド――つまりは、何かしらの要因で精神状況に多大な影響があった、ということ。それも『振鉄位階』、あるいはそれ以上ともなれば、並の要因で起こりうるものではない。
無論、イメージ力の鍛錬によって徐々にOWを発現していく者もいる。だがシスターの言から鑑みるに、もはやシンのソレは鍛錬でどうこうできる領域ではないだろう。
そして“その出来事”は、如何なる理由でシンを『鬼』としたのか。
「……っと、ここだよ。シスターには内緒でね」
「……?ここって、確か屋根裏の……」
シンの案内でたどり着いたのは、屋根裏部屋の入り口だった。老朽化もあって危ないから、と立ち入りはシスターが許可したシンしか許されていない筈だが、そんなところに何故連れてこられたのだろうか、と首をひねる。
かちゃ、と古びた扉を開けると、中は意外にも綺麗に掃除されていた。埃は多少散見されるが、誇張しても少し汚い生活スペース程度。荷物もきちんと整頓されているし、特に汚れもない。
見慣れぬ物珍しい空間にヒナミが目を奪われていると、シンは慣れた様子で奥まで歩いていく。タンスの影になっていて見えていなかったが、どうやら梯子があるらしい。
シンに続いて梯子の下までやってくるも、そもそもここが屋根裏部屋だったことを思い出す。であれば、この上に繋がっている梯子は……?
「よい、しょっと。気を付けて登っておいで、危ないからね」
「ぁ、……うん」
先に上っていったシンを追って、梯子に足を掛ける。元より低めの天井だったので梯子もそう長くはなく、ヒナミの身長でもさほど上るのに苦労はしなかった。先に上にいたシンが伸ばしてきた手を取れば、想像以上に強い力でぐいっ、と引っ張り上げられる。
瞬間、冷たい風が全身を撫でた。
「――わぁ」
目に飛び込んできたのは、高い位置から見下ろす道頓堀の街並みだった。
この教会自体は三階建てで、別にそう特筆して大きな建造物というわけではない。が、今二人が居る位置は屋根裏からさらに上った場所……つまりは、屋根の上なのだ。
無論そのまま屋根に立っているという訳ではなく、初めから登ることを想定して作られた高台のようなものらしい。シンとヒナミが入っただけでもそ
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