第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十五 〜義の人〜
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刻が過ぎた。
小休止のつもりが、存外時間が経ってしまった。
「主。そろそろ出立を」
「……ああ」
徐晃は、どうするのか。
暫し待ってみたが、現れる様子もない。
「ほな、ウチんとこも準備にかかるで?」
霞の言葉を契機に、皆が腰を上げた。
「お兄さん、稟ちゃん。徐晃さんは、あのままでいいんですかー?」
「いや、後は本人が決める事。我らが口を挟むべきではなかろう」
「そうですね。疾風は思慮もあります、心配せずとも自分の道は見つけるでしょう」
「でも、アイツなかなか強そうだったのだ」
「そうだな。我らに同行して貰えれば、とは思うのだが」
私としても、加わってくれれば心強いのは事実。
腕も勿論だが、あの義に溢れた心根は、得難いものだ。
……だが、無理強いする訳にもいかぬ。
「土方殿」
再び行軍状態になり、まさに動き出さんとした時。
徐晃が、私の前にやって来た。
「心は決まったか?」
「……は。それを申し上げる前に、土方殿に頼みがある。聞いていただけるか?」
「頼み? 私に出来る事であれば、だが」
「あの者達を、貴殿に預けたいのだ」
少し離れた場所にいる、自分の兵を指さした。
「ふむ。……楊奉を探すつもりか」
「その通りだ。やはり、楊奉殿の恩は、忘れられないようだ。だが、その為に奴らまで巻き添えには出来ん」
「しかし、我が軍で預かる、という事の意味は、わかっているのだろうな?」
「勿論だ。……貴殿の言葉を、信じようと思う。稟が真名を預ける程の人物、私の目に狂いはない筈だ」
真摯で、何の打算もない言葉。
そして、潔い態度。
……つくづく、惜しまれるな。
「……良かろう。貴殿の覚悟、この土方が受け止めよう。ただ、一つだけ、約定を願いたい」
「何でしょうか?」
「楊奉が見つかり、追っ手を避ける事が適ったならば。ここに戻ってきて貰いたい」
皆、同意とばかりに頷く。
「私が、か?」
「そうだ。貴殿のその力、民の安寧の為に使わぬのは天下の損失。私は、そう思っている」
「……民の安寧、か。果たして、それだけか?」
そう言う徐晃の顔は、笑っている。
「それは、貴殿自身が見定めれば良かろう。私が舌先三寸の男と見たなら、如何様にもするが良い」
「……いいだろう。では、その日が来る事を願っておく。稟、さらばだ」
「ええ、疾風も。待っていますよ、歳三様と共に」
稟に向かって頷くと、徐晃は去って行った。
「星。徐晃の預かり者、受け取って参れ」
「……はっ」
「歳っち。ウチらは、先に出立するで!」
霞が、馬上から叫ぶ。
「うむ。我々も、すぐに後を追う」
「ほな、後でな!」
駆けて
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