第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十五 〜義の人〜
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「では、ご無事なのだな?」
「恐らくは。少なくとも、我が軍は首級を上げてはいません」
その言葉に、徐晃は安堵の溜め息を漏らす。
「そうか……。ご無事なのが、せめてもの救いだな」
「徐晃殿。貴殿の言われる事はわかった。……だが、やはり私は、討伐されるべき運命にあった、そう見ている」
「どういう意味だ、土方殿。返答如何では、ただでは置かんぞ!」
腰の剣に手をかける徐晃。
「落ち着かれよ。事情は察するが、やはり黄巾党を名乗れば、討伐軍が差し向けられても当然。これは、勅令なのだからな」
「し、しかし!」
「貴殿は、我が軍と董卓・丁原連合軍が討伐に当たった事を言われるが。では、もし我が軍が白波軍を見逃せば、どうなったと思われるか?」
私は、努めて冷静に話した。
徐晃も、剣から手を離し、私の話に聞き入っている。
「まず、黄巾党の一派である以上は、他の官軍が討伐に来る。遠からずな」
「……それは、否定しないが。だが、白波軍は他の黄巾党とは違い、近隣の民から恨まれる事はしていない。それを聞けば、どうだ?」
「同じ事だろう。官軍に命じられている事は、あくまでも黄巾党の討伐。実態がどうであろうと、構わず攻撃を加える。私はそう見ているが、どうだ、稟?」
「ええ、仰せの通りでしょう。それに、黄巾党の看板を掲げている以上、更に事態が悪くなる可能性もあります」
「稟。それは一体……?」
「簡単な事ですよ、疾風。白波賊が仮に討伐を免れ、勢力を保ったとしましょう。その間、他の黄巾党集団は当然、官軍に付け狙われます。その結果、発生した敗残の将兵は、何処に向かうと思いますか?」
「……白波軍に合流する、と?」
「ええ。結果、規模は膨れ上がり、目につきやすくなります。そして、人数が増えれば、それに比例して抱え込む問題が増えます」
「食糧と、秩序……そんなところか」
私の呟きで、徐晃は崩れ落ち、地に手をついた。
「……どのみち、楊奉殿を救う手立てはなかったと言う事……そういう事か」
稟は、徐晃の肩に手を置いた。
「疾風。あなたの気持ちは理解出来るつもりです。ですが、これも時勢。後は、楊奉が追っ手を逃れる事を願うばかりです」
「……では、貴殿らは、追撃を行ってはいない、と?」
「そうだ。先ほども申したが、行方知れず、と言うのも事実だ」
「何故だ? 賊を討伐しても、頭目の首級を上げなければ、手柄の証拠にならんのだぞ?」
「私は、立身出世が目当てではない。ただ、苦しむ民を救い、皆が守れればそれで良いのだ」
「…………」
徐晃は、しきりに頭を振っている。
「……すまん。暫く、一人にしてくれないか?」
「いいだろう。稟、参るぞ?」
「はい」
更に、一
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