第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十五 〜義の人〜
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官職?
では、徐晃は宮仕えをしていたのか。
「随分と、思い切った事をしたのですね」
「いや、己の保身と財を得る事しか頭にない高官連中に、嫌気が差していたのは事実なんだ」
「徐晃殿。地位を捨ててまで、此処にやって来た理由、白波賊と関係があるようだが」
「ほう、察しがいいな。流石は、稟が主と見込んだ男だけの事はありそうだな」
話の流れからして、そうではないかと思っていたが、やはりか。
「白波賊の頭目の名、覚えているか。土方殿?」
「ああ。楊奉に韓暹、であったな」
「そうだ。韓暹は小悪党、取るに足りない奴だが。楊奉殿は違う」
「どのように違うのだ?」
「今でこそ賊の頭目などに身を窶してしまったが、本来は義の心を持つお人なのだ。私も、世話になったものだ」
徐晃は、遠い目をした。
「それで疾風。先ほどの矛盾、答えて貰ってませんが?」
「白波賊、いや白波軍は、楊奉殿が太守の横暴によって苦しむ民を見かねて、立ち上げた組織なのだ」
「それならば、何故黄巾党に荷担したのです?」
「……考えてもみよ、稟。黄巾党がここまで勢力を拡大した今、奴らとの連携なしに叛乱が成り立つと思うか?」
「では、正式に黄巾党に参加していたのではない……そう言うのですか?」
稟の言葉に、頷く徐晃。
「だが、白波軍は違う。理由なく民を襲ったりはしていない。太守を追放し、戦ったのも官軍相手ばかりだ」
なるほど。
当初、悪名を聞かなかった理由がわかった気がする。
稟や風達が、対象として見逃したとしても、やむを得まい。
「貴殿らが、それを承知の上で、白波軍に討伐と称して戦いを挑んだのなら。民を救う義勇軍、というお題目とは齟齬が生じるのではないか?」
「では、徐晃殿。貴殿は、白波軍と我が軍は戦うべきではなかった。そう言うのだな?」
「そうだ。だから、楊奉殿の危急を聞き、急ぎ駆け付けたのだが……。間に合わなかった」
無念そうに歯噛みをする徐晃。
「……事の次第はわかった。貴殿の言われる事も」
「では、楊奉殿を引き渡して貰いたい。あの御仁には罪はなく、朝廷の裁きを受けさせるに忍びない」
「それで、貴殿はどうするのだ?」
「……もう、洛陽には戻れまい。楊奉殿を、朝廷の手が届かない所までお連れし、畑でも耕して暮らそうかと思う」
「そうか。……だが、楊奉は渡せぬ」
「何故だ! そうまでして、勲功を求めるか!」
詰め寄る徐晃の前に、稟が立ちはだかる。
「どけ、稟! 如何に貴様と言えども、邪魔立ては許さん!」
「落ち着いて下さい、疾風。楊奉は、ここにはいません」
「では、既に洛陽に送った後か。ならば、こうしてはいられない」
「待ちなさい。楊奉は、落ち延びて行方知れずです」
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