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草魚
第一章
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               草魚
 大阪の福島のあるお池で、です。小学校六年生の豊口良太郎はお池の土手のところに座ったうえで一人釣りを楽しんでいました。ですが釣りをはじめてすぐに。
 川の中からです、こんなことを言われました。
「おいそこの坊や」
「坊や?」
「麦わら帽子を被った大きな目で膝までの白い半ズボンと緑のシャツを着て釣りをしている子だ」
「じゃあ僕やな」 
 良太郎は今の自分の姿をそのまま言われて頷きました。
「その坊やや」
「そや、自分や」
 まさにとです、声はまた良太郎に言ってきました。
「自分ちょっとええか」
「河童やったらお断りやで」
 良太郎は声が川の中から聞こえるのでまずはこう返しました。
「生憎やけど」
「いやいや、わしは河童やない」
「ほな何や」
「草魚や」
「草魚?」
「そや」 
 こう言ってです、一匹の黒っぽい頭のお魚がひょっこりお顔を出してきました、見ればかなりの大きさです。
「わしがそや」
「ああ、河童やないか」
「そや、草魚や」
「鯉でも鮒でもないんか」
「どっちでもない」
 草魚はそこを断るのでした。
「それは言っておく」
「そやねんな」
「というか草魚知らんか」
「そういえば小三の時魚の図鑑で読んだか」
 草魚に言われてです、良太郎は思い出しました。
「川にそんなお魚がおるってな」
「それがわしや」
「そやねんな」
「それで自分に頼みがあるけどな」
 草魚は良太郎にあらためて言ってきました。
「一つええか」
「何や?」
「実はわしはこの川から淀川に移りたいんや」
「あっちの川にか」
「そや、幸い自分でっかい水槽持ってるな」
 草魚は良太郎の横にある彼の身体から見れば相当に大きな水槽を見ました、ちゃんと持つ為の吊りバンドも付いています。
「そこに入れてな」
「それでかいな」
「淀川まで連れて行ってくれるか」
「ほなな」
 良太郎は今は日曜日の朝でまだまだ時間があることから暇だし別にいいかとか思いながら草魚に答えました。
「今から自分を水槽の中に入れてな」
「そしてやな」
「淀川まで連れて行ってな」
「そこに放してくれるか」
「そうするわ」
「済まんのう、あと言っとくことがある」
 草魚は水面からお顔を出したまま良太郎にこうも言いました。
「わしは食っても多分まずい」
「そうなんかいな」
「鯉と違ってな」
「というか草魚って食べられるんかいな」
「一応な、けど虫はおるしな」
 身体の中にというのです。
「それで味もやさかいな」
「食べてもまずいってことはか」
「言っておくで」
「わかったわ、まあ僕川魚食べんし」
「鯉もかいな」
「うちで食べるお魚は海で獲れたもんばっかりや」 
 それでとい
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