第二章
[8]前話
「井東って体育の先公いたよな」
「ああ、やたら暴力振るって偉そうな」
「いたな、そういう奴」
「急にいなくなったけれどな」
「そんな奴もいたな」
「パーマデブのな」
「顔が随分膨らんだな」
彼等は井東のことを口々に話した。
「嫌な奴だったな」
「いなくなってよかったな」
「俺いつもちょっとした理由で何発も殴られてたよ」
「俺もだよ」
「女子には甘くてもな」
「やけにな」
「そうだよ、あいつ実はな」
その男子生徒が仲間達にここで小声になって話した。
「レイプ事件起こしたらしいんだよ」
「えっ、マジかよ」
「あいつそんなことしてたのかよ」
「レイプって何だよ」
「とんでもねえことしたな」
「前勤務していた中学校で三年の人を呼び出して襲い掛かってな」
そうしてというのだ。
「やったらしいんだよ」
「それがばれてか」
「逮捕されたか」
「そうだったんだな」
「何でも前の学校で生徒の何人かに手を出しててな」
そしてというのだ。
「この学校でもらしいぞ」
「おい、この学校にも被害者いるのかよ」
「それ洒落になってねえぞ」
「じゃあ女子に甘い理由それか」
「狙っててか」
性欲の対象、それとしてだとだ。彼等もここで察した。
「あえて優しくしてか」
「本性隠してたんだな」
「道理でやけに女子に甘かった筈だな」
「狙ってたからか」
「そうみたいだな、つまりあいつは本物のドクズだったんだよ」
井東はそうだったというのだ。
「男は殴って女は犯す」
「マジゴロツキだな」
「本当に最低な奴だったんだな」
「人間以下だな」
「それでその悪事がばれてか」
「この学校からいなくなったんだな」
「逮捕されたからな」
強姦容疑、それでだ。
「生徒集会でも言わなかったんだよ」
「急にいなくなっってことか」
「言えない理由でか」
「そりゃ言えないよな」
「どう考えてもな」
彼等はそれで事情を察した、そしてだった。
井東を最低最悪の下衆野郎だったと認識して通っていた中学校を出た、もうそこに井東はいなかった。だが人間と呼ぶに値しない屑が教師としてその中学校にいたという事実は忘れなかった。それが紛れもない事実であるが故に。
女に甘い理由 完
2019・4・7
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