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渦巻く滄海 紅き空 【下】
二十七 的
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表情を浮かべている。
無理もない、とシカマルは思う。

中忍試験でカブトにもっとも懐いていたのは、ナルだった。
あの時の好青年がこうして次から次へと、彼女の前に立ちはだかるのはどこか因縁めいたモノさえ感じられる。



サソリに扮したヤマトが、カブトにいくつか質問する様子が遠目から窺えた。
何を話しているかは強風で聞こえないが、大方、大蛇丸のアジトの場所とうちはサスケ・春野サクラに関する情報だろう。
木ノ葉の里を抜け、大蛇丸の下へ向かったサスケとサクラの奪還がこの任務の最大の目的だからだ。
実際のところサスケは木ノ葉のスパイなのだが、サクラがサスケを追い駆けて大蛇丸の許へ向かったのも事実。


綱手がこの任をシカマルに命じたのは、サスケがスパイだと悟られない配慮だが、サクラを連れ戻す事が出来ればそれに越したことはない。七班のふたりを一気に失ったナルの悲しい顔を見るのはシカマルとしても辛い。

この任務で、少しでも彼女が明るくなれれば良いのだが、と知らず肩に力が入っていたシカマルを、左近が咎めた。


「少し、肩の力を抜け」
「気配を悟られるぜよ」

小声で左近と鬼童丸が注意してくる。シカマルは気まずげに「わかってるよ」と気を静めた。
元音の五人衆からの忠告は的を射ている。


だがその忠告はシカマルに対する言葉ではなく、どうやらナルへの発言だったらしい。
感情が聊か昂っているナルの頭を、シカマルは軽く手の甲で叩いた。天地橋のほうに注意を向けていたナルがシカマルへ顔を向ける。
大きく深呼吸したナルは熱くなっていた自分を静めてくれたシカマルに、「ありがとだってばよ」と小さくお礼を述べた。

自分も気を静めてもらった身なので、曖昧に苦笑したシカマルは、左近と鬼童丸に視線を投げた。
相変わらず眠っているらしい右近を背にする左近・鬼童丸は天地橋のカブトの動向をじっと観察している。
その動作がどこか似通っていて、同じ音の五人衆だと、こうも似た感じになるのだろうか、とシカマルは若干違和感を覚えた。

その左近と鬼童丸が、ピクリと身構える。
彼らの視線の先を追ったシカマルは、何やらハッと顔を引き締めたカブトを認めて、警戒心を強めた。


(気づかれたか…!?)

シカマル達と同じく身構えたヤマトは、カブトの視線が別方向を向いていることにホッと安堵する。
茂みからひょっこり現れた野兎に、カブトの強張っていた肩の力が抜けてゆく。


「野兎か…」

ガサリ、と揺れた茂みを一瞥したカブトは、改めてサソリ扮するヤマトと向き合った。












その様子を木陰から見ていた彼は、爬虫類のような瞳をゆるゆると細める。
天地橋を俯瞰できる場所で、野兎を一呑みに
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