純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 27
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別に二本、今日の店仕舞いまで取っておこう。他の商品も知り合いの店もたくさん紹介してあげるから、じっくり選んでおいで」
「はい。ありがとうございます」
此処では買わないかも知れないと意思表示したのに、おばさまは気分を害するでもなく、寧ろ積極的に民芸品以外もおすすめしてくれた。
お店同士の繋がりを意識しているからだとしても、おばさまの接客姿勢は群を抜いて良質なんじゃないかしら。きっと、こういう人を商売人の鑑と呼ぶのね。一人目がおばさまで良かったわ。
双方、笑顔で言葉を重ねること数十分。
一通りおすすめされた商品の中からペンダントの他にも幾つか取り置きしてもらい、おばさまが書いてくれた紹介状を片手に、再度雑踏の中へ滑り込んだ。
「……困ったわ……」
広場の中央に聳え立つ大きな日時計の石柱。
その土台を円く囲む階段に腰掛け、前方に延びる市場通りを眺めながら息を吐く。
おばさまの時と同じ要領で二軒・三軒・四軒とお店を回ってみたけど、何処へ行っても良い品を揃える優しい店員さんが出迎えてくれた。親切な人には親切な人が集まる……まさに「類は友を呼ぶ」の好例ね。
王都に住む友達へのお土産って話になっているからか、北方領ならではの前提で見繕ってくれるのも、現代の人間文化を詳しく知らない私にはありがたかった。
問題は、おすすめされた品々がどれも魅力的すぎて選べずにいる事。
「自分がこんなにも優柔不断だったなんて、知らなかった」
寒さに強い衣類や履き物。
女性を美しく見せる装飾品。
雪国に棲む動物の形をした彫り物。
緻密な模様で室内を彩るタペストリー。
お揃いの模様が描かれた色違いのカップ。
カラクリ仕掛けの四角い箱もあったわね。子供向けの玩具にも盗難防止用の貴重品入れにもなるなんて、便利な道具だわ。大切な物を仕舞った後で開け方が解らなくなったら大変そうだけど。
「うーん……」
多少特殊な環境下でも一応は人間世界に生まれ育ちながら、一般民との交流はほぼ皆無の状態で終わってしまった私の生。
たった一人しかいなかった当時の友達も、決して一般民とは言い難い男性だった。
「……こんな時、貴方ならどんな物を選んだのかしらね? エルンスト」
私にも貴方みたいに手作りできる物があれば、此処まで悩まなくて済んだのに。
無力感に耐え切れず、現実から目を背けるように空を仰いで……
びしゃっ
側頭部を殴打した何かの衝撃に硬直する。
びしゃ?
びしゃって、何?
今、私の頭に何が……?
びし! ばし!
「…………え、……と」
びしゅっ! ばしゅっ! ずべしっ!
「ちょっ、ちょっと待って!? 雪!? どうして雪……!?
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