暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 27
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んでこない。
 「では、支度をしてきます」
 「! 私も手伝うわ」
 立ち上がったアーレストさんに続いて厨房へ向かい、この教会で最後の食事の準備を始める。
 用意した食材はニンジンとイモとオニオンとお肉。香辛料をたっぷり使って、具材がとろけるまでじっくり煮込む。
 鼻を(くすぐ)る匂いは独特で、甘さと辛さが程好く混ざり合っている。
 スープと表すには粘度が高いそれをお玉杓子で掬って平皿に盛り、ロールパンと匙を添えて、コルダさん達が待つ部屋へ運ぶ。
 ちなみに、ティーはいつものお茶で、リースリンデは泉の水ね。
 人と悪魔と私はテーブルを囲む備え付けの椅子二脚と、空間を固めて作った椅子二脚。ゴールデンドラゴンはタオルを敷いたベッドの上、精霊はテーブルの上に座り、同時に手を合わせ、

 「「「「「いただきます」」」」」
 「にゃっ!」

 それぞれの食を進める。
 元は硬かった野菜の中心にも浸透している複雑な旨味を噛み締めながら、思い描くのは数十分後に待っている娘達との再会風景。
 今頃どうしているかしら。
 プリシラさん達とは仲良くできているかしら。
 アーレストさんからクロスツェルとお揃いのペンダントを貰ったら、どんな顔をするかしら。
 この髪飾りを見て、どう思うかしら。
 ……新しい友達がいっぱいできたのよって話をしたら、どんな反応をするのかしら。

 「美味しい」

 作りたてのこのご飯のような温かい雪国の話を、早く貴女に届けたいわ。
 私が感じたものを分かち合えたら、それも素敵なお土産になる……わよね? きっと。


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