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ある晴れた日に
65部分:穏やかな夜にはその十四
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たみたいにそれが終わって普通の芝居に戻ってな」
「訳わかんねえよ」
「何!?それ」
 皆話を聞いてもよくわからなかった。
「で、男は全員口髭で同じ顔で」
「インドだからね」
 これはわかった。インド人といえばターバンか口髭だ。両方の場合もある。多分に固定観念だがそういうイメージが強いのは確かだ。
「で、カーチェイスがあったり敵役が先回りしろって言ってそのまま出て来なくなったり」
「どんなストーリーなんだ?」
「で、ラブロマンスがあって最後は主人公が王子様か何かだってわかって大団円なんだよ」
「ストーリーあるのかよ」
「わからねえ」
 ストーリーに対しても返答はこうであった。
「っていうか何が何なのかわからねえうちに終わっちまった」
「そうなんだ」
「しかもやたら長かったしよ」
 インド映画の長さは尋常なものではない。何と八時間も上演されるものがある。インド人の気の長さは世界一なのであろうか。
「結局訳わからなかったな」
「どんな映画なんだ」
「カオスな世界みたいね」
「で、その映画の曲なんだけれどな」
 話を音楽に戻してきた。
「それでもいいか?」
「ああ、別にな」
「あんたに任せるわ」
 皆もそれで納得した。選曲は彼任せであった。
「弾くのは御前だしな」
「それで御願い」
「おう、それじゃあな」
「はい、その前に」
 ここでまた未晴が出て来た。
「栄養補給よ」
「あっ、悪いな」
 彼女が差し出してきたのはカレーと紅茶であった。
「これ食べて飲んでから御願いね」
「ああ。それじゃあ」
「全くねえ」
 咲が未晴を見つつ呆れたような笑みを浮かべる。
「未晴って優しいんだから」
「まあ、そんな未晴だから」
「私達も助かってるんだけれどね」
「感謝感謝」
 咲の他の四人もそれを意識しつつ言う。賑やかだが和やかな雰囲気の中で時間を過ごす面々だった。今は静かに時間を過ごしていた。


穏やかな夜には   完


                 2008・10・19

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