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魔法少?リリカルなのは UnlimitedStrikers
第44話 先駆者であろうとする者
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人はまだ、あんなことを考えているのだろうか、と。

「……まだ死にたいとか考えたりしてる?」

「……」

 思わず口から出てしまったけど、彼は返事をしてくれない。この距離で聞こえなかった、という事は無いはずだ。しばしの沈黙の後に。

「……皆で向こうに行こうって誘ったのは俺だ。結果皆の先を奪ってしまったし」

「誰もそう考えてないよ」

 自嘲気味に笑う彼に被せて言う。震離から聞いた、この人が自殺しようとした事を。初めは意味が分からなかった。だけど話を聞いて、彼の顔を見て泣いた。
 気付いてあげれなくて、情けなくて、悔しくて。傍にいようと決めてずっと居たのに、私は彼の苦悩を分からなかったんだから。それが切っ掛けになったみたいで、そこからだ、彼が前を向いて生きる様になったのは。

 だけど、私はずっと違う様に見える。先駆者として皆の前に立つと同時に。誰も寄せ付けなくなったようにも見えた。ずっと一緒に居る震離でさえも軽口を叩いてるけど、彼の本当の部分には触れていないように見える。
 
 それからだ、自嘲するように俺は弱いと言うようになったのは。自分は後方で指揮を取るようになったのは。

 何より、昔は色んな事を相談してくれたのに、もう彼から弱音を聞いたことが無い。

 最後に彼の涙を見たのは……いや、聞いたのは、震離が自殺を食い止めた時に聞いた話だけだ。

 それ以来彼は……ずっと。

「……響、さ。もう良いんだよ。ほとんど帰ってきた、だから……だから」

 不意に肩を捕まれ、響の元へ寄せられる。あまりにも突然過ぎて驚く暇もなかった。

「大丈夫。俺はまだ輝ける。まだ役目があるから、皆を見守っていく約束を護るから、だから平気だ」

 あぁ、あぁ……涙が溢れる。そこまで気負わなくていいっていいたいのに、彼の意思が固いのが分かってるから、言い出せない。彼の言葉の意味が分かるから、私達との約束を守ろうとしているって分かるから……。
 
 今も昔も彼の在り方に惹かれる人は沢山見てきた、彼が朴念仁じゃないことを知っているだけど、彼はそれを気づかないふりしてる。それが余計に悲しくて……辛いんだ。

 ――先駆者であり続けようとする彼の姿が。

 顔を上げて。彼の顔を見つめる。すると、困ったように照れた様な笑みを浮かべてるのを見て、ズキリと胸が居たんだ。

 だからね、フェイトさん。私達が惹かれたこの人はちょっとやそっとじゃ攻略できないんだよ。

 涙を拭いて、ベンチから立ち上がって。2、3歩前に出て。くるりと反転。不思議そうにコチラを見てる響を見据えて。目一杯微笑んで。

「さ、フェイトさんや皆が待ってる。行こう!」

 両手を伸ばして、彼の手を取って、立ち上げて……これが今の私の精
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