第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
カンダタとの戦い
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ときにはもう治まっていた。
けれど、煙とともにカンダタもいつの間にか消えてしまっていた。
「完全に逃げられたな……」
ナギが、苦虫を噛み潰したような顔でつぶやく。剣を納めたユウリも憤然としていた。
「元はといえばお前らがぼんやりしてたからだ」
「ま、まあまあ、王冠は取り返したんだからいいじゃん」
私は場を和ませるために言ったのだが、直後に浴びたユウリの視線が、それが場違いなのだということを意味していることに気がついた。
「……まあいい。こんなところでいつまでも突っ立っても仕方ないからな。……リレミト」
ユウリが短く呪文を唱えると、一瞬にして塔の入り口に戻った。そして息をつく間もなく、また別の呪文を唱える。
「ルーラ」
体が一瞬ふわっと浮かんだかと思うと、次に視界に映ったのはロマリアの町並みだった。
「も、もうロマリアについたの?」
行きは一週間以上かかったというのに、この差は何なんだろう。やっぱり呪文って便利なんだな。
「あれ? ってことは、ユウリがシャンパーニの塔に行ったときもその呪文使ったの?」
瞬時に気の乗らない表情に変わるユウリ。こういうときは大体くだらない質問をしてしまったときだと気づき、私は後悔した。
「ルーラの呪文はああいう塔やダンジョンを行き来することは出来ない。どちらにしろ一度も行っていない土地に移動することも出来ないがな」
「へえ、そうなんだ」
自分から質問しといてなんだけど、曖昧な返事しかできなかった。
ということは、ユウリもあの塔まで歩いて行ったってことだ。しかもあの魔物の蔓延る荒野の中を1人で。
一体どんなことをすれば、ユウリみたいに強くなれるんだろうか。私が目指す道は、どれほど遠く険しいのかを考えて、自然とため息を落とす。
空を見ると、青とオレンジが綺麗なグラデーションを映し出していた。風は少し肌寒く、町を歩く人は早く家路に着きたいのか足早に通り過ぎていく。
今こうやって悩んでても、仕方ないか。
とにかく私たちは一刻も早く王様に王冠を渡すため、日が沈む前に急いでお城に向かうことにした。
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