第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
カンダタとの戦い
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て、私はその場に硬直した。ううん、硬直というより、本当に体が動かない、というか……何も……。
――――――――――。
気がついたら、地面にカンダタが倒れていた。
代わりに、私の目の前には、懐かしい黒髪の勇者が立っていたのだ。
「まったく、本当にお前らは使えん奴らだ。こんな雑魚相手に手も足も出ないとは」
わざとらしくため息を吐きながら、ユウリは言った。
……え、何、どういうこと? なんでユウリがいるの? ていうか、なんでいきなりカンダタが倒れてるの?
私がぽかんとしたままユウリと、うつ伏せで倒れているカンダタを交互に見回していると、私の考えていることがわかるのか、ユウリが状況を説明をしてくれた。
「アストロン……自分と仲間を鋼鉄化し、攻撃を無効化する呪文だ。その代わり、俺たちから攻撃をすることもできないがな。それを唱えて変態の攻撃を防いだあと、呪文が切れるのを待ってから倒した」
変態というのはカンダタのことだろう。確かにあってる気がする。
「とはいえアストロンが切れるのは全員同じタイミングだからな。俺だけ先に効果が切れるようにした。まあ、この程度の応用、勇者の俺には造作もないことだがな」
そういうと、ユウリはふんと鼻をならす。
「あ、ありがとう、ユウリ」
私はとりあえずお礼を言った。顔を上げると、そこにはせせら笑いを浮かべる彼の姿があった。
「やっぱりお前らは俺がいないと変態1人さえ倒せないのか。それでよく盗賊退治なんて大見得切って言えるな」
何も言い返せない。実際、今ここにユウリがいなければ私たちは全滅していた。3人でどうにかできるだなんて、なんて浅はかな考えをしていたんだろう。ただ悔しさが込み上げてくる。
次第に滲む視界に、私は必死で抵抗した。けれど私の意思とは裏腹に、涙が頬を伝い床を濡らしていく。ユウリに顔を見られたくなくて、俯くことしかできない。
長い沈黙が続く。すると、床に伸びるユウリの影が僅かに動いた。
「ホイミ」
彼の低い声とともに、穏やかな光が私を包む。暖かくて心地よいそれは、今までの戦闘で傷ついた体をみるみるうちに回復させていく。
私は思わず顔を上げる。そこにあるのはいつもの無表情なユウリの顔。私の前に手をかざしているのは、回復呪文のホイミをかけてくれたからだった。
「ユウリ……?」
「とはいえ、お前らが囮にならなければ、ここまでスムーズに事は進まなかったかもな」
そう言い終わると、彼は手を下ろした。あちこちに出来た傷の痛みがいつのまにか引いていた。
「……ありがとう」
「あとの二人は……ああ、あそこか」
ユウリは辺りを見回すと、倒れているナギとシーラを見つけ、二人にもホイミをかけた。気絶し
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