第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十四 〜出立〜
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凍る思いだ」
「ふふっ、ご心配なく。今の私達が、歳三様と敵対するなど、天地がひっくり返ろうともあり得ませんから」
そう断言する稟。
私の器量如何ではあろうが、その信頼に応えられるだけの主であらねばなるまい。
「私もそう願いたいものだ。さて、話を元に戻すが……」
「公孫賛殿は、その為に内政、軍事とお一人で奮闘せざるを得ないとか。お気の毒ではありますが、それが現実というものでしょう」
脳裏で、公孫賛という人物を描いてみる。
……気のせいか、同情を禁じ得ないのだが。
「とにかく、会ってみるしかなかろう。もともと、我らは黄巾党の手から民を守るために立ち上がった義勇軍。ならば、それと戦う公孫賛は、協調すべきであろう」
「仰せのままに。では、私はこれで」
「あ、待て」
「はい」
思わず呼び止めてしまったが……思い直した。
「……明日がある。早めに休むように」
「わかりました。それでは失礼します」
……何をしているのだ、私は。
ただ、稟の体調は、常に気遣っておこう。
短命が故に嘆き悲しんだ曹操の、二の舞は願い下げだ。
翌朝。
城門にて、残る者の見送りを受けた。
「では、お父様。ご武運を」
「月も、并州を、そして元黄巾党の者を頼むぞ」
「はい」
「詠も、閃嘩(華雄)もだ」
「わかってるわよ、月はボクが守るわ」
「ああ。歳三に教わった事、無為にはしないと誓おう」
二人とも、迷いのない、いい眼をしている。
「霞。では、先に参る」
「わかっとる。万全の準備、とはいかへんやろうけど。けど、絶対に遅れるような真似はせえへん」
「待っているぞ。では全軍、出立!」
「応っ!」
再編した我が軍、士気は高いようだ。
装備も、旗揚げ当初とは比較にならぬ充実ぶり。
少なくとも、乞食の軍隊、と揶揄される事はもうなかろう。
「主。念のため、周囲の索敵を行っておきます」
「うむ、任せる」
「ははっ!」
自主的に、星が動き出す。
「風」
「お呼びですかー?」
あの身長で、どうやって器用に馬を操れるのかは甚だ疑問なのだが。
……それも、触れてはならぬ事の気がする。
「間諜を専門とする一隊を作ろうと思うのだが、どうだ?」
「風は賛成ですねー。星ちゃんはもっと、違った配置で真価を発揮すると思いますから」
「やはり、そう思うか」
「ですが、現状では間諜を取り仕切るだけの人物がいませんねー」
「誰か、心当たりはいないか? 身分や出自は問わぬが」
「……ぐー」
よくも馬上で、このように器用に寝るものだ。
「稟はどうだ? 風を起こした後で良いから、思い出してみてくれ」
「は、はぁ……。風、起きなさい」
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