第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十四 〜出立〜
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。
……確か、袁紹との争いでは、部下を見捨てた事がきっかけで信を失った筈。
だが、月の資料は、公孫賛が誠実な人物である事を示している。
劉備を陰日向に支援したとも言われるしな。
「歳三様。宜しいでしょうか」
「稟か。入れ」
「はい、失礼します」
私が手にした竹簡を見て、
「申し訳ありません、調べ物の最中でしたか?」
「いや、いい。それより、用件があるようだが」
「こちらを、お確かめ下さい」
稟が差し出した竹簡を受け取り、開いた。
幽州に向けての、部隊編成が詳細に記されている。
そして、必要な糧秣までもが計算済み。
ただ羅列するのではなく、要点を押さえた記述といい……流石だな。
「如何でしょうか?」
「……稟。見事だ、文句などあろう筈もない」
「あ、ありがとうございます」
安堵の溜息を漏らす稟。
「丁度良い。これも、稟の意見を聞かせて欲しいのだが、良いか?」
「勿論です。私は、歳三様の軍師ですから」
私は、公孫賛の資料を、稟に手渡す。
「これは、月殿が?」
「ああ。まずは、それに目を通してくれ」
「わかりました」
ジッと竹簡に見入っていたが、顔を上げると、
「なるほど。一軍の指揮にも優れ、人物もなかなかである……そう、書かれていますね」
「そうだ。稟は、旅の途中で公孫賛には会っていないのか?」
「ええ。星は、いずれ客将として落ち着く、候補の一つと考えていたようですが」
私がいなければ、実際にそうなっていたであろう。
ただ、この世界には今のところ、劉備には出会っていない。
存在しないのか、それとも私がその代わりの役目を担う事になるのかはわからぬが。
……尤も、今の星が私と別行動を選ぶ……あり得ぬか。
「稟は、本命が曹操であったな。では聞くが、曹操と公孫賛、比べるとどのように考える?」
「そうですね」
眼鏡を持ち上げながら、少し考えているようだ。
「まず、覇気の違いがあるかと。曹操殿は、ただの一官吏で終わる方ではなく、いずれは天下を狙って打って出る、英雄気質の方。一方の公孫賛殿は、地方の刺史としては十分でしょうが、それ以上のものを求めるのは酷かと」
「器量に差がある、そう言いたいのだな?」
「……残念ながら。それにもう一つ、公孫賛殿はご自身は相応に優秀と聞いておりますが、配下にこれといった人物が見当たりません。曹操殿はその点、人材を求める事には非常にご執心なされておいでとか」
「そうであろうな。私の知識では、稟、風、詠、霞は曹操の配下となっていたからな。ねねも、一時期はそうであった筈だ」
「……それが皆、今はご主人様の下に揃っているとは。皮肉なものですね」
「全くだな。皆を敵に回すなど、背筋が
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