第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十四 〜出立〜
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大きく頷いた。
「にゃ? 愛紗、どういう事なのだ?」
「わ、私に聞くな!」
……二人には、説明が必要なようだな。
「いいか、我が隊の主力兵は何だ? 鈴々」
「えーと、歩兵と弓兵なのだ」
「では愛紗。霞の隊は?」
「騎兵が主かと……あ」
「どうやら、気づいたようだな。そうだ、行軍速度が違う」
「せやから、ウチらは後で追いかけても、幽州までに合流するんやったら問題ない。せやろ、歳っち?」
「正解だ。稟、風、ではこの日取りで進めよ。良いな?」
「御意!」
「御意ですよー」
「星、愛紗、鈴々は、二人の指示で部隊の再編を行え。頼むぞ」
頷く三人。
「…………」
「…………」
月と二人、黙って手を合わせる。
土饅頭に、粗末な墓標。
だが、本人の遺志だと言われれば、豪奢にする訳にもいくまい。
「お父様。ありがとうございます」
「む?」
「丁原おじ様を、丁寧に弔っていただいた事です」
「いや。私自身、付き合いは短い間ではあったが、真に立派な御方だった。このぐらいせねば、死者への手向けにならぬ」
「はい……」
そんな月を見て、ふと思い出した。
「そう言えば、丁原殿は匈奴との付き合いも深い。そうであったな?」
「ええ」
「今も、その関係が絶えた訳ではなかろう。一度、挨拶をしておいた方がいいのではないか?」
「挨拶、ですか。……でも、匈奴は異民族。朝廷からは、相容れない敵、という見方をされています」
「では、その敵、というのは誰が決めたのだ? 古来から、諍いが絶えぬからであろう?」
「そうです。その為に、秦の始皇帝は長城を築かせたのですから」
「しかし、丁原殿は友好を築く事に成功しているのだ。彼らは遊牧民族、攻め寄せるとすれば……食糧であろう」
「お父様は、匈奴の事をご存じなのですか?」
「多少な。だが、面識はない」
私が知るのは、書物の上での事のみ。
だが、この時代、彼らが農耕民族である可能性は、限りなく低かろう。
遊牧生活であるが故に、食糧調達は安定は望めぬ。
必然的に、農耕民族である漢に攻め入り、食糧を奪う、という事になっても何ら不思議ではない。
「月。至難を極めるやも知れぬが……匈奴との連絡と友好は絶やさぬよう。後背に敵を持たぬ意味でも、な」
「……わかりました。何とか、やってみます」
史実の董卓も、異民族とは上手く付き合っていたのだ。
月ならば、やれる筈。
私には、そんな確信があった。
そして、四日が過ぎ。
いよいよ、出立の前夜となった。
月に貰った、公孫賛に関する資料を、今一度読み返してみた。
公孫賛、別名が『白馬長史』。
騎射の出来る兵士を選りすぐり、白馬に乗せて率いる
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