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聖国のジルフリーデ 〜勇ましき姫と気高き女騎士と、男勝りな女戦士と妖艶な女盗賊は、媚薬の罠に乱れ喘ぎよがり狂うも、心だけは屈しない〜
第3話 女を堕とす媚薬の罠は、白き肢体に染み渡る
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 その想いに突き動かされた今、立ち止まるわけには行かない。
 ジルフリーデは媚薬によって汗だくになりつつある身を押して、前方の帝国兵達を跳び越えると――母の元を目指し、最後の螺旋階段を駆け上って行く。汗を散らせるスカートの下が、見えてしまうことも厭わずに。

「……えぇ、当然ですとも。ベーナゼット、ロザヴィーヌ! 一旦散るぞ、ここでは分が悪すぎる!」
「そう、ねっ……このままでは少しばかりっ……!」
「逃げるのはシャクだけど……しょうが、ないかっ……!」

 かつては臆病で優しく、そして小さな勇気を秘めていた、かけがえのない幼馴染。そんな姫君の背中を見届けた後――笑みを消し去ったラフィノヴァは、共に戦う仲間達に指示を出すと、それぞれ別の方向へと走り出して行った。

「女共が逃げたぞ! ジルフリーデはいい、奴らを捕まえろ!」
「確かあいつらは犯してもいいんだったよなぁ!? タァーップリと可愛がってやるぜぇぇえ!」
「よっしゃあぁあ! 俺が1番乗りだぁあぁッ!」

 そんな彼女達の「陽動」が功を奏して、帝国達はラフィノヴァ達3人を追い始めて行く。捕まえたところで、アンジャルノンの厳命により犯すことができないジルフリーデよりは――「好き放題」してもいいと許可されている彼女達の方が、彼らとしても「旨味」があるのだ。

 大広間から飛び出し、互いから距離を取り合うように分散して行くラフィノヴァ、ベーナゼット、ロザヴィーヌ。彼女達3人を追う帝国兵達は、その股下に潜む剛剣(・・)に焼け付くような熱気を宿していた。

「ラフィ、ベナ、ロザ……どうか皆、ご無事でっ……!」

 彼らの怒号を背にして、ジルフリーデは一瞬だけ振り返ると――やがて意を決したように、最上階の寝室へと駆け出して行く。その決意に満ちた貌に、もはや迷いはない。

 全ては最愛の母をアンジャルノンから救い――この聖国を苛む帝国の悪意に、終止符を打つために。

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