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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
想いは紅涙と共に
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ら、その眦の上がった目を細めていた。降り掛かる水滴を指の腹で拭いながら、自分も内心で驚嘆する。
それが思わず声に洩れていたのだろうか──アリアは小さく頷くと、指折々と数えだした。


「理子が話せるところだけなんだけど、《イ・ウー》の内部と、《魔剣》のことも言ってた。やっぱりメンバーなんだって。それで、《魔剣》が動き出した目的まで教えてくれたらしいの。ママへの濡れ衣を着せた──って証言するだけが、本当なら理子の役目のはずなのに……」


アリアは語調を下げながら、訝しむようにして目を伏せた。余計な仕事を働いた理子の魂胆を、必死に模索しているのだろう。武偵活動の復活を条件に──という、妥当ながらも裏がありそうな話を聞いてしまっては、自分もアリアも考慮を重ねる以外の方法はなかった。
しかし彼女の経緯や魂胆はどうであれ──目前の利を見れば、それは落胆すべきことでもない。理子のその行きさつは気になるところだけれど、今すぐに自分たちがどうこう出来ることでもないだろう。時期が来たら話をすればいい。今は自分たちが、出来ることをするだけの時間だ。


「……でも、良かったね。これで君の母親に、少し近付けた」


アリアは自分の告げたその言葉に、醒めたようにして顔を上げる。そうして何度か大きく頷いてから、赤紫色の瞳を瞬かせた。その瞬きも2度が限界だったのだろう、前髪の奥にある目尻のあたりに紅涙を満ちさせながら、何とか唇を閉じて嗚咽を噛み殺している。唇の隙間から漏れる嗚咽も次第次第に大きくなっていって、遂にはあの時のように、子供らしく泣き腫らしていた。

彼女は必死に目尻のあたりを拭いながら、赤くなった目元を隠そうと前髪を下ろす。そうして、気恥ずかしそうに「……ごめん」と、吐息のようにして呟いた。あの時とは、違っていた。
「なんでアリアが謝るの。謝らなくてもいいんだよ」そう苦笑する。おもむろに手を伸ばしてから、まだ拭い切れていない生温い紅涙を、親指の腹で綺麗に拭い取った。 彼女はまた大きく頷くと、「……ありがとう」と零す。そのまま手を胸のあたりに握らせて、涙声を吐き出した。


「なんだか胸のあたりがギューってなって、会えないママのこととか、彩斗がパートナーになってくれたこととか、寂しいとか嬉しいとかがグチャグチャになっちゃって……、それで……。それでね、自分でもよく分からないんだけど、勝手に涙が出てきて、止まらなくなっちゃって……」


いつもの勝気な少女の面影は、そこには微塵も見えなかった。いつもは気丈に振る舞っているのを間近で見知っているからこそ、時折こうして見せる彼女の──子供めいた弱気な態度に、安堵してしまっている自分の一面もある。同時にそれは、自分がいかに彼女に信頼されているかという度合いの証左でもあった。他の誰で
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