第22話
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リーダー、ハッチは開放されましたか?」
「動く気配もないよ」
再び操作を試みるも、機器の反応の無さにシマはため息と共に髪をかき上げる。
「リーダー、動いていないようです。故障でしょうか」
「故障だと? 直せるのか?」
「今調べます。少しお待ちを」
シマの細い指が端末を目まぐるしく操作する。同時に機長とやり取りをしながらも目は各種のモニタリングを追い続ける。一人で何人分もカバーできるシマ・ハチジョウの大活躍により、原因が判明するまでそれほど時間はかからなかった。
「リーダー、原因が判明しました。貨物区画の一部に電力が通っていません」
「直るか?」
「応急処置は不可能だと思います。機体のログを辿ると、リーダーの機体を収容して扉を閉鎖した際に駆動部分の一部に異様な負荷がかかっていました。不通箇所の電気的な修理は可能でも、開閉部分の機械的な修理は飛行中は不可能だとキャプテンが」
「つまりここまで来ながら出撃不可だと……!?」
「これも相当に古い機体ですからね……」
シマの声には困惑とある種の諦めが、野良犬の声には抑えきれない苛立ちが滲み出ている。二人の通信を横で聞いているレンチェフだけが、声を出さずに快采を叫んでいた。野良犬が出撃出来ないということは、ガルマ大佐が野良犬に食い殺される未来を回避することが出来たと考えたからだ。それはつまりガルマ大佐が連邦軍に殺される未来が確定したということなのだが、レンチェフにはそこまで先が見えていない。
これはレンチェフの頭が悪いということではなく、情報の不足によるものだ。マ・クベ中将が送った増援で事足りると思っているのだが、思わされている、というのが事実に近いだろう。思わせているのは勿論、壺の大好きな男だ。
レンチェフが自身の無事を確信して一人拳を握りしめていると、野良犬が言葉を続けた。
「仕方ない。少し強引に出る」
「出る?」
唐突な言葉にシマもレンチェフも戸惑うばかりだが、野良犬自身が分かりやすく解説をしてくれた。
「壁を壊す」
「なっ!?」
「はい、どーん」
野良犬の言葉と共に輸送機が揺れた。間一髪で自動操縦を解除したパイロットがどうにかこうにか墜落を防ぐ。鳴り響く緊急警報と機体を襲う振動の中、必死で席にしがみつくオペレーター達とは違い、犯人は澄ましたもの。
「おーおー、やるじゃん。いい腕してる」
「今何やったんですか! 本当に壊したんですか!?」
「わんわん嘘つかない」
「飛んでる最中に!? 機体外壁抜いた!? 頭おかしいでしょ!」
「うん」
「子供か!」
「ばぶー」
「それはもういいです!」
「私は昨日勉強したんだ。繰り返しこそギャグの基本、とな」
シマはヘッドセットを外して頭をかきむしった。この野良犬
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