第22話
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ンで行われたガルマ・ザビ救援作戦だったが、これとてマ・クベにとっては見せ札に過ぎない。本命は真っ当な支援などではないのだ。相手は旧アメリカ合衆国。衰えたりとはいえど、未だ地球連邦加盟国で最強の存在だ。ジオン公国の陸戦部隊の総力を挙げるならまだしも、複数回の降下作戦を見越して戦力を分割した内の一方面軍程度でどうこうできる相手ではない。諸事情で分散したとはいえ、それでも現地の戦力差ですらマ・クベの指揮下の戦力をすべて派遣して何とか、という状況だ。まともにぶつかって、まともに支援して……まともまともの積み上げで勝てる状況でも相手でもない。非常の時には非常の策が要る。
マ・クベは躊躇なく自身の切ることのできる最高のカードを切った。存在をいかに秘匿するか、独占するかとここ数日に渡って心を砕いてきたが、そんな苦労とは悪い意味でさようなら。方面軍への根回しから鼻薬から文書偽造や虚偽報告や物資の横流しや部下の事故死、何から何まで全て無意味になってしまうが、それでも手札を晒した。マ・クベの切り札、野良犬だ。
今のところは北米まで足を伸ばすつもりはない、と渋る野良犬を、大量の物資という報酬で無理矢理頷かせたのである。再編中のアジア、インド方面部隊に使う予定だった物資がそのままリリアナの報酬として前払いされるし、バイコヌール宇宙基地で発見された貴重な大型シャトルが野良犬をニューヨーク沖に輸送するためだけに使われる。ここまでは野良犬を北米に往復させることに対するコストや報酬であり、作戦に対する成功報酬はまた別に計上されている。今回の作戦が終わった時には地球侵攻軍の機密費は空になっているかも知れないが、ガルマ・ザビ本人の安全と引き換えなら安い取引だ。
空になった機密費は後でギレン総帥やキシリア少将からいくらでも取り返しが利くし、自身の支援でガルマ大佐を助けたとなれば、本人が武人肌で自分の事を良く思っていないドズル中将からの心証も好転するだろう。何より、ジオン本国の世論とデギン公王へのアピールになる。野良犬が狂犬過ぎてガルマ大佐に危害が及ぶ可能性もあるにはあるが、何もしなければ連邦軍に圧殺されてしてしまうのだから、狂犬程度のリスクなど無いも同然である。
全弾装填した銃と、一発しか装填していない上にその一発が99%以上の確率で空砲の銃。ロシアンルーレットをするならどちら? という話だ。迷う余地など無い。
全てを理解して切り札を投入したマ・クベと違い、オペレーター席でガクブルしているレンチェフにはそこまでの理解も情報も覚悟もない。ガルマ・ザビの無事をひたすらに祈るだけである。
「さて、降下予定座標が近いな。シマ、係留索を外す。ハッチを開けろ」
「わかりました」
野良犬の指示にシマが開閉ボタンを押し込むも、開放を示す警報は鳴らない。
「……?
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