第五章
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「囲める敵はだ」
「囲んで、ですね」
「そのうえで確実に倒す」
「そうしていきますね」
「そうだ、敵の数を少しでもだ」
それこそというのだ。
「減らしていけ、そうすればだ」
「今後に生きていきます」
「敵が減れば減るだけ」
「だからですね」
「倒せる敵は減らしていきますね」
「そうする、だがその時もだ」
敵を包囲してその敵を倒す時もというのだ。
「無理はするな」
「こちらの損害は出すな」
「最低限に抑えろ」
「そういうことですね」
「そうだ」
クルックの返答は強いものだった。
「戦闘はこれで終わりではないだろうしな」
「まだ続く」
「だからですか」
「ここは」
「そうだ、無理はするな」
激しい銃撃を続ける兵達に告げた、クルック自身は今は銃撃に参加していないが彼も拳銃を既に手にしている。戦闘は激しくてだ。
それでだ、囲んだ敵を確実に倒すか降伏させていたが。
その中で一人の若く身分の高いインディアンが囲まれていた、クルックはそのインディアンを見て言った。
「まだ若いが酋長らしいな」
「そうですね、何処かの村の」
「その様ですね」
部下達もそう見た、彼等はインディアン達が合議制民主主義とは認識しておらず酋長が治めていると考えていたのだ。
それでだ、クルックにもこう応えたのだ。
「ではです」
「牛も頭を潰せば確実に死にます」
「酋長ならですね」
「倒すか降伏させるかですね」
「そうさせる為にもだ」
まさにと言うのだった、クルックも。
「そうするぞ」
「はい、それでは」
「逃がさない様にしましょう」
「そして囲んで」
「そのうえで」
「そうだ、倒すか降らせるかだ」
こう言って何とかその包囲網を解こうとしていなかった。だが。
彼等は戦場と包囲だけを見ていた、その外は見ていなかった。それで戦場に向かって駆けてくる一騎の戦士にはすぐには気付かなかった。
戦士は囲まれている若い身分の高いインディアンの方に突っ込んできた、そして激しい銃撃を浴びせてきた。
「なっ、奇襲か!?」
「伏兵か!?」
「いきなり出て来たぞ!」
「何だ!」
「馬鹿な、伏兵はいない筈だ」
クルックもその戦士を見て言った。
「周りに常に斥候を出していたが」
「はい、伏兵はいません」
部下の一人もクルックに即座に答えた。
「怪しい場所は隅から隅まで見ましたが」
「いなかったな」
「そのうえでここまで進軍して戦闘を行っています」
「そうだな、だからな」
「それでだな」
「伏兵はいない筈です」
「ではあの敵は何だ、いや」
クルックはその戦士を見て気付いた、よく見ればだ。
髪の毛が長く顔立ちも違っていた、その戦士は。
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