第四話 夢と日常の狭間
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なくていいように。
──もう、冴空が怯えなくていいように。
────そうして俺の『理想』は作られた。
──それが俺の生きる全てだった。それは全て冴空の為だと思っていた。それは間違っているなんて微塵も思っていなかった。
「……でも、本当の意味で冴空の事を考えてなかったんだよな……」
──だがそれは、確かに、愚かで、綻びだらけで、傲慢で、自己満足で、過ちだと、やっと気づくことができた。
「大切な者とは共に歩め。か……」
──まだ迷いはある。過去の俺を否定したくないという思いもある。だから、少しずつ、考えよう。
「……てか今何時だ……十一時かよ。部屋出るのも面倒だ、カップ麺にするか」
昨夜、夜遅くまでその事について考えていたせいか何時もより大分寝過ごした氷絃はため息をついてベッドから降りる。
洗顔を済ませ、常備してあるカップ麺の山から適当に選んだ『オイラの紅塩ソバ』と『ヘイヤングソース焼きそば大盛』の二つにお湯を入れ、待つ。
一分も経てば『オイラの塩ソバ』を湯切り、それを終えたら今度は『ヘイヤングソース焼きそば』の湯切りだ。ソースとふりかけをかければ二つとも完成だ。
「さて、いただきますと」
昼飯も兼ねているためそこそこ量のある焼きそばをズッズッ、と氷絃はかなり早いペースで食べ始める。
中等部時代の最初の方はこれを毎日送ってきた彼だったが、ある日それを知った冴空が「ダメです! 身体に悪いです! これからは私が氷絃くんのお昼ご飯を作ります!」と言って、それを翌日から実行してからカップ麺を食べるのは休日の昼飯と夜食のみとなっていた。
十分もしないうちに二つの容器をからにした氷絃はそれらをゴミ袋に突っ込む。
「……さて、コイツを片付けるか……めんどくせぇ……」
氷絃が手に取ったのは春期休暇の課題として出された現代文のワーク。四回分に加えて現代文のみ赤点の渇れには追加として難易度が低めのワーク一冊が残っている。
彼は現代文が大の苦手である。漢字や語彙等の記憶力を頼りとするモノは得意だが、圧倒的に文章を読むのが不得手なのだ。
「いや、高等部だと補習の時間も増えるからな……苦手を克服しなきゃ冴空と一緒にいられる時間も減る」
そして一頁目を開けた氷絃は────
「……無理だ、眠い……頭に入ってこない……」
数秒でダウンした。そしてコックリコックリと舟を漕ぎ始めたところで扉が勢いよく開いた。
「おっはー!」
そう元気よく入ってきたのはボサボサの茶髪に作業着の男子生徒。人懐っこい笑顔がよく似合う少年だ。
「……天治か。帰れ」
「おいおい俺は客だぞ? 茶の一つくらい出してくれよぉ」
「アポなしで勝手にやってきた奴は客
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