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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
カートの挑戦
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あ、たしか空手や柔道などの素手の格闘家が武器を持った剣道家に勝つには三倍の段位、実力が必要。というやつじゃなかったか?」
「そうだ。そういうふうに説明されることが多いが、これは某漫画が発祥の言葉で、本来は槍や薙刀といった長物を持った相手に刀や剣で立ち向かうには、剣の使い手は相手の三倍の技量が必要である。という考えが元になっている」
「たしかに、より長い武器を持った相手にはそのくらいの実力差がないと勝てないだろうな」
「ところがこの『三倍段』という考えにはさらに元ネタがあり、さかのぼれば『攻撃三倍の法則』から来ている」
「攻撃三倍……」
「うむ。敵を攻めるには三倍の兵力を要し、守るには三分の一で足りるという、第一次世界大戦でドイツ陸軍が研究していた考えだ。さて、こいつを個の戦いに置き換えるとどうだろう」
「……それは」

(……敵の三倍動く!)

 魔物の前肢がうなり、カートの身を切り裂こうと迫る。それを右に左にかわして魔物の側面、背後、側面、正面、側面、背後、と俊敏に動き回る。

「おお、虎の周りを走り始めた!」
「なんて速さなの!?」
「速いっ! 虎が追いきれていないぞ」
「あれなら虎の突進を防げる!」
「どんな身体強化魔法を使っているんだ!?」

 否。カートは魔法など使ってはいない。法眼から教わった体術、歩法術を駆使しているのだ。

(円空圈の根源は円の動き、円を描く体術。ならば、俺自身が円≠になればいい!)

 軽功【円空旋】によって目まぐるしく動き回るカートの姿を追いきれず、魔物の足が止まる。その時、カートが魔物の背後を取った。

(まずは後ろ足を断つ!)

 剄力の込められた片手半剣(バスタードソード)が振るわれた瞬間、魔物の後ろ足が地を離れ、跳ぶと同時に蹴りが放たれた。

 ――ッ!?

 とっさに体をかわし、直撃を避けるも鋭い鈎爪が革鎧を切り裂く。金属には劣るが獣脂などで煮詰めて硬革化処理をされた革鎧(ハードレザーアーマー)の硬さはそれなりの防御力があり、短剣程度では簡単に貫ぬくことはできない。それを紙のようにいともたやすく切り裂いたのだ。

(くっ、跳ぶと同時に蹴りだと!? なんて獣だ、まさか俺の攻撃を誘うためわざと動きを止めたのか? ――ハッ!?)

 真正面からの横殴りの一撃。避ける余裕はない、盾を突き出して防御する。
 盾ごと、腕を持っていかれた。そうと錯覚するほどの衝撃だったが、なんとか防ぐことに成功した。だが内側のベルトに腕を通す型の盾ではなかったらこの一撃で弾き飛ばされていただろう。
 しかし、腕と盾をベルトで固定していたことが仇となった。

「痛ッ! か、肩が外れた!」

 真面目に柔道などをたしなんでいる読者諸氏には経験があるので説明の必要は
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