第21話
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まかに計算すると、優雅に惰眠を貪る時間はないように思われた。小さくため息をつくと、シャトルと通信を繋ぐ。
「こちらわんちゃん。ふぁ」
欠伸混じりの野良犬に答えたのは女性の声。シマ・ハチジョウのものだった。
「お目覚めですか、リーダー」
「いま起きた。しゃくしぇんにょ概要をもう一度たにょむ」
「はい。作戦を確認します。戦域はニューヤーク全域、目的はニューヨーク市占拠を図るジオン公国軍の支援となります。まずはフェーズ1、このままニューヨーク沖250キロメートルで投下、自力で接近し沿岸に停泊している艦船を攻撃します。最優先目標はミサイル艦、次が航空母艦です。輸送艦、砲艦は無視して構いません。目標を破壊後、フェーズ2に移行します」
「ふわわ……」
寝起きそのものという様を隠そうともしない野良犬。小なりとはいえ一組織の長がそれで良いのかという態度だが、シマは完全にスルーした。短い付き合いだが、言って聞くような野良犬ではないことくらいは理解している。無駄なことをして大切な生命を危険に曝す必要はないのだ。
シマが野良犬に従っているのは自分の生命が惜しいからであって忠誠を誓っているわけではないし、立派な指導者であって欲しいと期待や願望を抱いているわけでもない。欠伸がしたいなら顎が外れるほどすれば良い。欠伸混じりに話すと聞き取りづらくなるので、オペレーターの立場としてそれだけはやめて欲しいが。
「シマァ?」
野良犬の気の抜けた催促が八丈志麻を現実に引き戻す。
「……失礼しました。それではフェーズ2です。沿岸部から都市部を横断し、郊外に設営されていると思われる敵司令部を強襲します。市内の敵は無視してください。敵司令部の制圧が最優先です。また、コジマ汚染を考慮して市街地での接地は認められません、高度300以上を維持して下さい。加えてプライマルアーマーの展開及びアサルトアーマーの使用も認められません」
「注文が多いな……その後は?」
「フェーズ3です。ここからはレンチェフ大尉に代わります」
ぶつ、と音を立てて通信が切り替わる。次に野良犬の耳に届くのは男の声。入団試験を通過した期待の新人、レンチェフだ。
「団長、レンチェフだ。フェーズ3を説明する」
「頼む」
「状況が流動的だからな、フェーズ3は難しい。周辺の連邦軍を叩いた団長には、足を伸ばして主戦場に乱入してもらう。降下部隊への顔見せも兼ねてな」
顔見せか、と野良犬の声が弾む。
「何事も第一印象が大切だからな。名刺代わりにネクストの十八番、斬首戦術を見せてやろう」
「フェーズ2で後方の総司令部を潰すだけじゃなく、前線司令部も叩く気か? これで3連戦になる、残弾の都合もあるし、ほどほどにな?」
「ほどほど……可能な限り撃破しろということだ
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