第21話
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
水に浸かり、閉鎖空間に叩き込まれた津波のエネルギーは地下空洞の地形そのものを変えてしまった。完全復旧は10年先か、20年先か……今の戦争には到底間に合わないため、地球連邦軍はキャリフォルニアベースの放棄を決定していたのだった。被災して2ヶ月、遺体回収のチームが作業していたのみである。
キャリフォルニアベースが無血開城したが故に、ニューヤーク方面は両軍の予想を超える激戦となった。本来ならキャリフォルニアベースやその付近の基地にいるべき戦力は、キャリフォルニアベースの放棄に伴い移動していた。西海岸が軒並み津波にやられたことで軍事インフラが機能不全に陥り、戦力を維持することが出来なくなったのだ。主な移転先はニューヤークをはじめとした東海岸である。
衛星を使えず航空偵察にも相当の制限がかかるこの時期では、護るべき連邦軍にとって広大な北米大陸で機動中の敵野戦軍を捕捉して迎撃することは困難だ。点を点で捉えるのは難しく、線で捉えようとすれば薄くなった防衛線を突破されるばかり。突破された際の危険は増すが、防ぎきる算段さえあるならば、敵が必ず来る目的地直前、重要拠点の付近で護りを固めた方が間違いがない。例えば州間高速道路80号線はカリフォルニアからニューヨークまでをほぼ横一文字でつなぐ大動脈だが、これはそのままジオン公国軍にとって理想的な進軍経路足りうる。このライン上で徹底防御するのが常道なのだが、そもそもジオン公国軍は好きな地点に宇宙空間から降下することが――連邦軍の妨害を考慮しなければ――可能なのだ。必ずしも既存の交通路に固執する必要はなく、それはそのまま連邦軍にとってジオン公国軍がどこからどのように攻めてくるかを絞ることができない、ということを意味する。それならばいっそのことどこからどう攻められても良いように、防衛線を限界ギリギリまで下げる、という発想である。
連邦軍が思いきった戦線縮小を行った結果、ニューヤーク近辺にはジオン公国軍の予想を超える大部隊が展開していた。降下してきたジオン公国軍とは違って全員が戦闘要員というわけではないし、被災地の救助や支援に相応の人員を割いている。それでも人数だけで言うならこの方面に進出してきたジオン公国軍の5倍以上であり、連邦地上軍の中でも装備も練度も最上級。恐るべき旧アメリカ合衆国の意地と底力。ジオン公国のプリンスの前に立ちはだかるのは、旧世紀最強国家の誇る、地上最強の軍隊だ。
「……その大軍の背中を私が突くというわけだ」
シャトルの貨物ブロックの中、係留索で宙吊りになった機動兵器。その操縦席で野良犬は無自覚に呟いた自分の声で意識を覚醒させた。移送中は暇なので、少し眠ったり色々と考え事をしたりしていたのだが、今回の作戦について考えている内に声に出ていたようだった。また寝直すか、とも思ったものの、頭の中で大
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ