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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 24
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さい。見られて困る物ではありませんし、ヴェルディッヒ殿下ならば封などせずとも無事に届けていただけると信じておりますので」
 「信頼には全力でお応えしたい所ですが、両陛下宛てとあればプリシラ嬢と言えども検分は避けられません。失礼します」
 「ええ、ご存分に」
 ヴェルディッヒはにっこり笑うプリシラの前で封筒に折り目が付かぬよう慎重に持ち上げ、二つ折りにされている一枚の紙を取り出した。
 封筒と同じく真っ白で四角い紙の内側には、たった一文

 『おじさま、ありがとう! おばさま、だいすき!』

 とだけ、とても綺麗な文字で書かれていた。
 「「「………………………………。」」」
 無言で顔を見合わせる王子と騎士。
 彼らの前でにこにこしている次期大司教。
 その様子からして陸な事は書いてないなと察した第一補佐。
 なんとも形容し難い沈黙を数秒挿んだ後、折り畳んだ紙を封筒へ戻し。
 「此方の親書、確かにお預かりしました。必ずや両陛下の許へお届け致します」
 王子は何も見なかった事にした。
 騎士も同意見らしい。両腕を腰に回し、目蓋を閉じて、ヴェルディッヒの背後に控え直す。
 「ありがとうございます、ヴェルディッヒ殿下。よろしくお願いしますね」
 「お任せを」
 キメ顔で請け負った彼の懐に仕舞われる謎の手紙。
 後々それを受け取った国王と王妃が、教会に関する報告は二の次だと貴族社会を巻き込んで上を下への大騒ぎを起こす羽目になるのだが、その理由が明るみに出る事は無く、また、騒ぎの中心人物が王都内の孤児院に存在していた事実も、極々限られた一部の人間の胸の内にのみ秘められた。
 ただ、その日以降暫くの間は、一般民に降嫁した王の末妹との思い出を語り合う国王夫妻がデレデレと弛み切った顔で毎晩そわそわと落ち着き無く城内を徘徊したり、貴族の当主またはその周辺の者達が突然床に臥せたり消息不明になったりと、不可解な事件が相次ぐ事になる。
 領地管理の仕事柄、一般民の生活模様にも直結する貴族界のお家騒動。
 それも切っ掛けの一つとなって、やがてアルスエルナ国民の関心は「女神アリア降臨の痕跡」から「貴族階級の変事」へと傾いていく。
 全て、プリシラが狙っていた通りに。

 「では、私達はこれで失礼します。今後も何かお力になれる事があればご相談ください。可能な限りの協力はさせていただきます」
 「頼りにしております、セーウル殿下。並びに第三騎士団の方々。皆様に女神アリアの祝福が舞い降りますように」
 「「「ありがとうございます」」」
 話を終えた四人は揃って正門へ向かい、今度はプリシラがミートリッテを背に、王子と騎士達全員を送り出す。
 騎士達を見掛けて集まっていた群衆も、先頭の馬が歩き始めると自然に道を開き、一行の後ろ姿に手を振
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