第ニ話 交流会(前)
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いなくても関係ない」
「いやその理屈はおかしいんじゃないかな?」
柵の部分に背を預けながら二人は男子高校生らしい、下らない話を続ける。冴空と話す時とはまた違った、優しい笑みを氷絃は浮かべている。
「また冴空ちゃんから逃げたのかい?」
「……逃げたってなんだよ」
隆太が尋ねたのは先程、冴空が仄めかした『契約』のことだと氷絃は理解している。そして逃げたのも事実だが、それでも彼は問い返す。
「ほんと、付き合っているのかってくらい仲がいいのになんで契約しようとしないのさ。彼女ほど最高の魔女はいないだろう?」
「ああそうだな。製鉄師になるなら冴空ほど最高の魔女はいねぇな。しかも宇宙で一番可愛いし優しいときた」
氷絃は最後に自慢するかのように笑いながら呟く。
「なら!」
「だが、それは俺の『理想』に反する。アイツが俺の魔女になったら俺は俺のしてきたことを全て否定することになる」
「……冴空ちゃんはキミ以外と組みたくないと言っている!」
声を荒げる隆太に対して、氷絃は冷たい眼で彼を見る。
「なら、好都合だ。契約の成功には魔女側の受け入れる思いが不可欠だ。それならアイツが誰かの魔女になる心配もないな」
「…………キミのその『理想』ってのは、冴空ちゃんの思いも利用するモノなのかい?」
「ああ、そうだ」
「彼女が、大切じゃないのか? 彼女を守りたくないのか?」
「大切に決まっている、守り抜きたいに決まっている、この命よりもな。
だからこそ、俺は冴空を魔女にしたくない」
「はぁ……ほんと頑固だね。冴空ちゃんが可哀想だ」
「言ってろよ」
そう告げると、隆太は悔しそうな顔でその場を去っていった。冷たい風が氷絃の少しだけ熱くなった頭と身体を冷やす。
それから数分、氷絃は夜景をボーッと見つめ、中に戻る気配さえなかった。そのため、彼は最後まで背後から近寄る一人の男に気がつかなかった。
「失礼、隣いいか?」
「……え? あ、どう、ぞ……」
後ろからやってきた予想外の人物に話しかけられ、氷絃は目を剥き硬直する。それは──
「黄劉、学園長……」
「驚かせてすまない。少し、君と話をしたくてな」
「俺と……? 『製鉄』位階の俺に、学園長が話、ですか?」
「そうだ。尤も、私が話をしたいのは君と珠充冴空の事だがな」
その言葉を聞いた瞬間、怪訝な顔をしていた氷絃の表情が腑に落ちたそれに変わる。この学園においてカースト底辺にいる氷絃において、数少ない特徴の一つが『珠充冴空と幼馴染であり交友関係が良好』であるということだ。
「……契約を断り続ける冴空を説得しろ、とかでしょうか?」
「言っただろう。『君と珠充冴空のことだ』と。安心してくれ、私はあくまでも『製鉄師養成
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