天才の足跡〜その二〜
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目の前に立っていたのは、わたしとそう歳の変わりそうにない、少年だったからだ。
「おいおい、助けたってのにその態度はねーだろ?せめて礼くらいは言ってくれよー」
小学生くらいの甲高い声は、私の神経を逆撫でしていた。
「……あぁ、すまない。助けてくれてありがとう。それじゃ」
しかし、私がこの少年に助けられたというのは事実だったので、大人しく謝罪と礼の言葉を口にする。その後、すぐに立ち上がり、スタスタと立ち去ろうとする。
「おいおい!せめて自己紹介くらいしよって!」
「……悪いが、男と話す趣味はない」
「レズか?」
「死に晒せ」
「ひでぇ!?」
あまりにも低俗な言い分に、私はとことん冷酷に突き放す。と言うか、小学生くらいの男子が知ってていい単語ではない。
「私は、お前と話す時間に価値はこれっぽっちも感じない。だから、行かせてもらおう」
「──ちょっとちょっと!待ってってば!」
しかし、私の足はそこで止まった。
理由は単純。目の前にその少年が両手を広げて立っていたからだ。
それだけならなんてことは無いのだが、私は少年に向かって背を向けて話していたはずなのだ。
それがいつの間にか、私の目の前にいた。
「……お前、何者だ?」
少なくとも、普通の少年にできる芸当ではない。
私は思わず、名を聞いてしまった。
少年は勝ち誇ったかのように笑うと、口を開いた。
「俺の名前は橘 悠人!艦娘候補生の一人だ!!」
─休憩スペース─
「……つまり、お前とほか二人の男が、艦娘になれるかどうかの実験に参加している……ってことか?」
「ま、簡単に言えばなー」
橘はそう言いながら、カップに入ったお茶を啜っていた。
あの後、完全に負けを認めた私は、大人しく橘とゆっくり出来るところで自己紹介し合う事になってしまった。大変不本意だし、実に不愉快だった。
そこで聞いた話は、この橘と、七宮、そして長谷川と言う少年たちが、この鎮守府で「艦娘候補生」として、世界初の男にの艦娘になるための実験に参加しているとのことだった。
「まぁ、ただ艦娘の血を注射するだけじゃ失敗は目に見えてるからなー。色々と実験やらなんやらしてから、になるけどなー」
「……非人道的な、か?」
「当たり前だろ?」
私の問いかけに、当たり前のことを聞かれたかのようにポカンとしながら橘が私を見てきた。
「人体使って既存の枠の外のことをしようとしてるんだ。そんなこと当たり前だろ?最も、艦娘に近づいてるからか、怪我とかすぐに直るようになったけどな!
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