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ソードアート・オンライン 宙と虹
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の調味料を提供したりと短い間ながらも、非常に楽しい時間だった。

 安地部屋は、原則モンスターは発生しない。加えて進入不可だ。そこに入れるのは、プレイヤーだけである。今しがた、俺たちのいる安地に入ってきたのも、俺たちの知り合いだった。

「おぉ! キリトじゃねえか! なんだ、エバも一緒か」
「なんだとはなんだ。酷い言いようだな、クライン」

 ちなみに、彼は俺のことを唯一、エバと呼ぶプレイヤーだ。その名をクライン。ギルド《風林火山》のギルドリーダーで、中層時代にレベリングを一緒にしたこともある友人。ちなみに、エバと呼ぶのは単に言いにくいから、だそうだ。確かに言われてから、エネバという名前は言いにくいな、と気づいた。これならまだリアルネームを使った方がマシだったかもしれないとさえ思ったほどである。やはり日本人には少し響きが特殊だったのかもしれない。

「まあ、なんだ。ギルメンも揃い踏みか。ここまでお疲れさん」
「おう、サンキュ。この先はもうマッピングしたのか?」
「ああ、ボス部屋までな。俺は見てないけど、こいつ等は見てきたらしい。チャレンジ精神旺盛なこって」

 俺は苦笑交じりに親指で二人を示す。

「ほぉ……で、どんなボスだったん……」

クラインがキリトの隣に立つ人物を視界に収めた瞬間、奴は固まった。そこに立つのは言わずもがな、血盟騎士団副団長であり、現在キリトとコンビ中の女騎士ことアスナだ。

「おい、どうした、クライン。ラグってんのか?」

VRならではの皮肉を投げかけるが、未だ反応がない。俺は、肩を掴んで揺らすか、と思い近づく。しかし、俺が肩に手を掛ける前に、クラインは目にも止まらぬ速度で、アスナの眼前に移動していた。AGI型と言われた方が信じられるくらいの速さだった。

「こっここ、こんにちは!くく、クラインという者です二十四歳独身」

 どさくさに紛れて始まったクラインの唐突な自己紹介は彼が言い終わる前にキリトが一発パンチを叩き込んで黙らせた。

 しかし、クラインだけには留まらず、彼のギルドメンバーである他の五名さえ次々に自己紹介をし始める始末。男衆に囲まれるアスナを助けるのは、キリトの役目であろうと思って俺は一歩引いて傍観していたが、流石にこの状況には呆れてしまった。

 しかし、楽しい雰囲気を壊してしまう出来事が、すぐそばにまで迫っていることを、俺は聞き耳スキルで悟った。奴らとの邂逅は、間違いなく穏便に終わるわけがないのだから。
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