純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 23
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、人体に有害な植物にうっかり触ればかぶれ、虫に刺されれば炎症を起こす、自然豊かな危険地帯。
痒みに耐えかねて引っ掻いたりしようものなら、開いた傷口に入り込むのは雑菌だ。軽く膿むだけで済むならまだ良いが、場合によっては致命傷にもなり得る。
実際、現代よりも不衛生な環境に置かれていた昔の各孤児院では、そうやって命を落としたであろう子供達が数え切れないほど確認されている。
ある程度の自制心を育んだ大人達ならともかく、軽率な行動に走ってしまいがちな子供達にとって、外傷用の洗浄液と痒み止めは命綱にも等しい必須道具。
そして、毎日欠かさず使わなければいけない消費物の筈。
「昨日から全く変わってないなんて、普通ならありえない」
「昨日は偶々痒くならなかったんだろ」
「クァにゃんも痒くなかったの?」
「気にしてなかった。何処かのクソババアの所為でそれどころじゃなかったしな!」
「ふぅん……? 気にならないって事は、痒くなかったのね」
「嫌味まで無視かよ。マジでムカつく」
「私も気にならなかったの。どうしてかしら?」
「知・る・か・っ! もういいから、さっさと出てけ! オレが連中に絡まれんだろうが!」
扉を指し示して喚くクァイエットを横目に、もう一度じいっと痒み止めの瓶を見つめ……ふっと微笑む。
「じゃ、そろそろ帰りますかぁー! 薬の管理はよろしくね、クァにゃん♪」
「は? なんでオレが」
「覚えてるんでしょ? 此処に在る薬の種類と、継ぎ足し用の置き場所。たった一日の滞在で、名前も書いてない薬を正確に言い当てて元の位置に戻せるなんて、なかなか素晴らしい記憶力よ。伸ばしなさいな、その長所」
「……盗むかも知れないぞ」
「ふふ。食べ物以外を盗んでも、適切に処理できる相手がいなければ宝の持ち腐れ。分かってるからこそ、空き巣に入っても食材にしか手を付けて来なかったんでしょう? やって来た事自体は勿論責められて当然だけど、頭の回転が速い子は個人的に嫌いじゃないわ」
震える彼の肩をぽんぽんと叩きながら横を擦り抜け、部屋を出て行く次期大司教。
自信と威厳が溢れるその背中に振り返り
「…………っ、オレはお前らが大っ嫌いだ!」
顔を真っ赤にしたクァイエットが吼える。
「一生赦さないし、一生搾取してやるからな! オレを此処に入れた事、死ぬまで後悔しやがれ! バーカ!!」
施設内全体に反響しそうな叫びを背中で受け止め。
プリシラは無言のまま、ひらひらと手を振って応じた。
「……元気ですね、彼」
馬車の扉を開いて待っていた聖職者姿のベルヘンス卿が、手を重ねたプリシラにだけ聞こえる声量で言葉と笑みを零した。
プリシラも柔らかく微笑み、肩越しに施設をちらりと見る
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