492部分:歌に生き愛に生きその十四
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えが正しいことを確信した。そうしてそのうえでまた言うのであった。
「それで行きましょう」
「音楽と食べ物で」
「これなら違うと思います」
あらためて晴美に告げるのだった。
「ですから」
「そうね」
晴美もまた。今の正道の言葉に声で応えるのだった。
そうしてそのうえで。非常にゆっくりとだが確かに言葉を出したのだった。
「じゃあ私は果物とかを持って来るわ」
「そうですか」
「そして音橋君は」
「ええ、俺もできるだけ持って来ます」
彼もこう申し出るのだった。
「それにギターだってこれまで通り」
「有り難う」
彼のその心を受けて深い礼の言葉を出す晴美だった。
「それじゃあ明日からも」
「それであいつがまた動いてくれるのなら」
「話してくれるのなら」
二人はそれぞれ言うのだった。
「俺はもうそれで」
「そうね。私もそれでいいわ」
二人は同じ言葉を出していた。心が同じになっていたからこそだった。
「やってみます」
「私も。本当にそれを」
「じゃあ。また明日ですね」
「ええ」
ここで隔離病棟の出入り口を出たのだった。病院の中ももう消灯の時間で暗くなっていた。廊下に出ている人間は患者も看護士も医師も誰もいなかった。
病院の中を進んでも看護士達が時折行き交うだけだった。その他には誰もいない。その静まり返った不気味なものさえある病院の中を進んで。そうして病院を出たのだった。
「じゃあ」
「お休みなさい」
二人はここで別れの言葉を告げて病院を後にした。彼は一人で家に帰った。
しかしであった。その病院を出たところを見た者がいたのだった。それは」
「あれっ、あいつ」
春華だった。彼女は丁度その自分のバイクで病院の前の道を通っていたのだ。そしてそこで彼に気付いたのであった。
「何でこんな場所にいるんだ?」
これがまた話のはじまりになった。一つの悲劇がさらに多くの悲しみ、そして戸惑いを生み出して巻き込んでいく。それもまた運命だったのだろうか。運命という渦が大きく何もかもを巻き込みその中で彼等を弄ぼうとしていた。
歌に生き愛に生き 完
2009・9・29
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