第一章
[1/2]
[1]次 最後 [2]次話
北から南へ
その話を聞いてだ、遠山金四郎景元はこう言った。
「そうならねえとな」
「やっぱりですね」
「道理が合わねえってもんだ」
自分の屋敷に来てそのことを話した者に至極当然と言ったのだ。
「というか最初からな」
「鳥居殿の様な御仁はですか」
「ああいう奴は用いたら駄目だ」
「重くも軽くもですね」
「どんな形でも使ったらいけねえ奴だ」
それが鳥居甲斐守、通称妖怪だったというのだ。
「性根がとんでもなく悪いからな」
「何と言いますか歪というか」
「人を陥れたりすることがとにかく好きで抜群に得意だからな」
そうした者だからというのだ。
「それでだよ」
「用いてはならなかったのですね」
「最初からな、それを水野様がな」
水野忠邦、この前まで老中だった彼がというのだ。
「変に用いてな」
「それで、でしたね」
「ああなったからな」
「目付になり南町奉行になり」
「その時に矢部さんを追い落としてな」
遠山はこのことを苦い顔で言った、性格は自分とは全く違うが遠山は清廉潔白な矢部を好きであったのだ。
だが鳥居はその矢部を追い落とし自分が南町奉行となり権勢を誇り自分の得点の為に民達を虐げた、それで遠山も言うのだ。
「そんなことをしてたからな」
「その前のでしたね」
「蛮社のな」
「あれで田原藩の渡辺殿が」
「ご自身から腹切られることになっただろ」
「残念なことですね」
「ああ、それで俺もだ」
遠山は自分のことも話した。
「今は大目付だがな」
「北町奉行から」
「これも俺が目障りだったからだよ」
南町奉行である自分と同格で何かと自分の邪魔をする遠山をだ、鳥居はとかく邪魔に思っていたのだ。
それでだ、水野に働きかけてだったのだ。
「大目付に祀り上げて邪魔をさせねえ様にしたな」
「そうでしたね」
「とにかく学はあるがな」
「その学問をですね」
「絶対にいい方には使わねえ」
「そうした方だったからこそ」
「そもそも絶対に用いたら駄目だったんだよ」
こう言うのだった。
「大体な」
「左様でしたか」
「それでああなった、それで今の老中阿部様に危うい奴と思われてどんどん追い詰められてるならな」
それならというのだ。
「自業自得だよ、多分このままな」
「重い処罰を受けますか」
「あれだけ悪事ばかりしてきたんだ」
それならというのだ。
「もう一生お天道様の下には出られねえかもな」
「永蟄居ですか」
「そうなるだろうな」
幕府が下す処罰でとりわけ重いものだ、失脚どころか遠山の言う通り一生日の下どころか部屋から出ることも出来ない。そうした極めて重い処罰だ。
それになるとだ、遠山は言うのだった。
実際に鳥居はこれま
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除