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渦巻く滄海 紅き空 【下】
二十五 野心
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・左近。

前者は思惑通りに死を偽造し、こうしてナルトの許にいるが、後者は『根』に捕らえられている。

その右近・左近と鬼童丸が、草隠れの里にある天地橋へ、木ノ葉の忍びと共に向かうという。
はっきり言って、死にに行くようなものだ。


懸念する次郎坊がナルトに詰問するのを聞き咎めたのか、多由也が間に割って入ってきた。

「グダグダうるせぇな、デブ。ナルトに口出しすんじゃねぇよ」

次郎坊の肩をガシっと掴んで、ナルトから引き離す。
ナルトの前で仁王立ちになった多由也の相変わらずの口の悪さに、次郎坊は顔を顰めた。

「多由也…前々から言ってるけど、女がそういう言葉をあんまり…」
「うっせぇよ、デブ!!ほっとけ!!」

ぎゃいぎゃい騒ぎ始めた多由也と次郎坊に、すっかり蚊帳の外になったナルトは苦笑する。
同時に、『音の五人衆』である彼らが、なんだかんだ言いながらも、『根』に生け捕りにされた右近・左近と鬼童丸を気に掛けている事がわかって、内心ホッとした。


「─────で?どうするつもりだ」

壁を背に、腕組みしていた再不斬がナルトに訊ねる。
多由也と次郎坊、それに一歩離れたところにいる君麻呂を眺めながら、ナルトはつい、と再不斬に視線を投げた。


「どうもしないさ」
「見殺しにする気か」

死んだはずの部下が実は生きていて、しれっと天地橋へ向かうとどうなるか。
大蛇丸が来ないほうに懸けるしか、右近・左近と鬼童丸の生き抜く道はない。

再不斬の問う視線を受け、ナルトは黙ったまま目線を遠くに向けた。
窓辺に腰掛け、遠くを眺める。その視線の先が何処に向けられているか察して、再不斬は肩を竦める。


「まぁいいさ。俺達はお前に従うだけだ」

再不斬の独り言のような呟きを背中で拾う。
首だけを巡らせて振り返ったナルトは、口許に苦笑を湛えた。


「苦労をかけるな」
「何を今更」

面倒くさそうに頭をガリガリ掻いた再不斬は、傍らの首切り包丁を手繰り寄せる。
白い大きな布で覆われたソレを指先でなぞりながら、「コイツが錆びつくまでには終わるんだろ」と誰ともなしに訊ねた。

首切り包丁は、血液中の鉄分を吸収する事で刀身を修復する。
よって、いくら刃毀れしても、たとえ折られたとしても、敵を斬り続ける限り何度でも修復されていく能力を隠し持っている。
だから錆びることもないはずなのだが、再不斬はあえて含みのある言い方で問うてみた。


「ああ」

窓から外の光景を一望しながら、ナルトは口を開く。チラリと再不斬を見遣った瞳は、彼の言葉の裏を完全に汲み取っていた。

空よりも海よりも底知れない蒼を宿したその双眸には、昔と変わらず、決意の色が強く宿っていた。



「終
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