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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  〜無形物を統べるもの〜
一族の物語 ―交わした約束― A
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きを見ている。自分の周辺では、ユースティティアが式神の軍勢を相手取っている。目隠しとしては大変優秀な状態。
一輝の様子を、改めて確認する。距離があるので、ギフトを用いて。……間違いない。

「悔しいけれど、ヤシロさんの言うとおりになったわね」

神霊としての彼は、久遠飛鳥如きを視界に入れることはない。ディーンやアルマであれば警戒されるだろうが、その主は対象外。戦力は大して存在しないし片手間で潰せる存在である、と。

良い度胸ではないか、ではそれを利用してやる。その心構えで、状況の観察を続ける。ここまでは何度か想定からズレてこそいたが、それでも今の状態は都合がいい。一輝から距離を取り、ディーンの肩に乗り、アルマが相手をしている。空中は飛鳥の式神、一輝の妖怪、ユースティティア。

よし、いけるはず。少なくともアルマが囮の役割を果たしている今なら、最悪の結果にはならない。そう結論付けて……ディーンの腕を、走る。
不安定で仕方ない、道ですらないその場所。周りで式神と妖怪が戦っているのを無視して、ただひたすらに。人間程度の身体能力しかなく、人間程度の体力しかない彼女が。本来体を動かす立場ではないにもかかわらず走るのには、理由がある。
なにせ、アルマとディーンは警戒されているのだ。故に動けば意図がばれ、警戒される。それでも、自分なら。非力極まりない自分が走るのであれば。今の彼は、それを認識することすらできない。

そすいて……彼女は、ディーンの掌までたどり着いた。息を整えようと、深呼吸を一つ。無理だった、だが関係ない。ここまでたどり着けたのなら、もう自分が動くことはないのだから!

「すぅ……“ブン投げろ、ディーン”!」
「DEEEEEEEEEN!!!!!!!」

忠臣へ、命令。素直に従い、カタパルトのようにしならせ、投げ飛ばす従僕。それと同時に、両手の宝玉へも命令を下す。一輝までの一直線、そこにいる妖を燃やせと命令を下し。同時に、そこへ突っ込む自分を保護するように命令を下す。燃焼と氷結の宝玉、共に砕け散るのを躊躇うことなく許容して、全力で耐える。

「な……ッ!」

時間にしてみれば、ほんの一瞬でしかない。当然だ、ディーンが投げ飛ばしたのだから。
もう眼前まで来た彼女を見て、その意図を察する。だが、気付いた時にはもう遅い。
拳を振りかぶる。若干ずれた標的の位置は、アルマが逃げ場をふさぐことで修正した。

「殴り、飛ばせ……ッ!!!!!!!!」

非力極まりない拳。それでも自らへ下した命令によって、的確に、鋭く、自分の拳を痛めながら。


それでも。最も弱いプレイヤーが、最も強い状態の主催者を、殴り飛ばした。

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