第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十三 〜并州〜
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中に貼り出した結果、群衆は落ち着いた。
悪質な者は、有無を言わさず処刑。
それ以外の者は、一切の財産を没収して、追放。
無論、取り調べの経緯は事細かに記し、都へと奏上させた。
正しき沙汰が下りる望みは薄いが、月の名に置いて出せば、少なくとも公式なものとして通る筈。
そして、臨時に月が并州刺史を務める旨も、一緒に書き添えさせた。
いきなり、私が名乗りを上げれば、叛乱と受け取られる恐れがあるが、月ならば朝廷の高官、処罰の口実もあるまい。
「しかし、丁原殿も思い切った事をなされる。まさか、この機を利用して腐吏の一掃を図る、とはな」
「……ですが、これで私がやり残した事が、一つ片付きましたから」
「そうか」
月に頷くと、私は皆に向かって告げた。
「まず、引き連れてきた黄巾党の者は、ここに残す。軍として希望する者は除くが、これで衣食住がない生活からは解放される。そう、全員に申し渡せ」
「はっ!」
「それから、月。その者達の自立を頼みたい。臨時の刺史として、領内の政務に専念するとなれば、ここにとどまる口実となろう」
「はい。ですが、お父様は?」
「黄巾党の討伐に戻らねばなるまい。霞が、代理として月の軍を率いれば良かろう」
「ウチか? それはええんやけど、歳っちは?」
「私は無位無冠。よって、引き続き義勇軍を率いる事になる。だから、形式上は霞の指示で動く事になるな」
「わかった」
「詠、恋、ねねは月のところに残れ。高順と臧覇は、恋を補佐し、丁原殿の軍をまとめて欲しい」
皆が、一斉に頷いた。
「そして、華雄だが。月」
「はい。華雄さん、字と真名を与えます。字は廉銘、真名は閃嘩。どうでしょうか?」
月がそう言うと、華雄は全身を震わせ、
「……ありがたい。その名に恥じぬよう、全力で仕える事を誓う」
そう言うと、人目も憚らず涙を流した。
「では、閃嘩。お前は、常に月の傍にいるのだ。親衛隊長として、月を守って欲しい」
「……応! 我が武にかけて」
「ではお父様。……くれぐれも、ご無事で」
「月も、頼む」
この後、中央で何が起こるのかは予測できぬが……月を、理不尽に殺させはせぬ。
私を信じてくれた、丁原のためにも。
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