第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十三 〜并州〜
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私腹を肥やす、または中央での出世ばかりに目が眩んでいる輩の方が多かろう。
「お兄ちゃん! また差し入れなのだ」
鈴々が、果実の詰まった袋を抱え、やって来た。
……民が、何かを私に期待している、それはわかる。
だが、それは何であろうか?
「風。どう思う?」
「……ぐぅ」
……返事がないようだ。
「風! 起きなさい!」
慌てて、稟が起こした。
「おおぅ! つい、日和に誘われてしまいました」
「寝ておったのか。暢気な奴だ」
「いえいえ。それで風に、何の御用でしょうかー?」
「……いや、いい」
何となく、気が削がれてしまった。
それに、晋陽に着けば全てがわかるようだ、焦る事もなかろう。
やがて、行く手に城塞都市が見えてきた。
この地に来てより、城というものをまだ見ていない事に気づいたのだが。
城、と言うが、日本のそれとは相当に違うようだ。
城そのものが巨大な街であり、その中に、軍事拠点としての城が存在する。
嘗て、太閤秀吉が攻め滅ぼした、後北条氏の本拠地、小田原城がこれに近いのやも知れぬ。
「む? あれは」
私は双眼鏡で、晋陽の街を見た。
一条の煙が、城の付近から立ち上っている。
「高順、臧覇。あれは?」
「はい。民が、立ち上がったのかと思われます」
「恐らく、城はすっかり取り囲まれていましょう」
「民が? どういう事だ?」
今、城にいるのは留守居役の将兵のみの筈。
政務が滞っているにしても、煙とは穏やかではない。
そもそも、月の治政には手抜かりは感じられぬし、丁原への不満と言うには、あまりにも早急過ぎるのだ。
……まさか、私への不満であろうか。
だが、それならば道中での民の反応からすると、全くの不可解となる。
「稟。星は戻ったか?」
「いえ。その後、連絡は受けていませんね」
星の事だ、万が一という事もないだろうが。
……だが、用心に越した事はない。
「霞、愛紗。一足先に、晋陽に入れ。何かが起きているようだが、このまま向かうには情報が足らぬ」
「任せとき」
「はいっ!」
「主、お待ち下され!」
絶妙の間合いで、星が帰還した。
「申し訳ござりませぬ、主。直ちに、軍を進めて下され」
息を切らせながら、そう告げた。
「星ちゃん。それではわからないのですが?」
「そうだぞ。晋陽で民が蜂起したと言うのは、真か?」
口々に質問を発する将達。
「皆、落ち着け。星、まずはこれを飲め」
私は、腰の水筒を外して、星に手渡す。
「忝い、主」
蓋を外し、星は中身を一気に干した。
「ふう……。人心地つきました」
「では星、報告を
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