第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十三 〜并州〜
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ぞ」
「ええ、お父様。……気に入って貰えるといいのですけど」
「心配要らぬだろう。佳き名と、私は思う」
「……ふふ、じゃあ、大丈夫ですね。お父様の美の感覚は、超一流ですもの」
そう言って、月が微笑む。
「そうか?」
「はい。……あの、今度、詩吟を教えて下さい」
「詩吟? しかし、私が嗜むのは、俳句と呼ばれる短い歌だが」
「いえ、それがいいのです。朗々と歌い上げる詩吟もいいのですが、お父様の俳句というもの、私も覚えてみたいのです」
「わかった」
私の拙い発句を、まさかあの董卓に伝授する事になるとは、な。
ふふ、本当に人生、何が起こるかわからぬ。
「申し上げます。晋陽よりの使者が参りました」
「使者とな」
「はっ。如何しましょう?」
伝令の兵を前に、皆は私を見る。
「いいだろう。ここへ通せ」
「ははっ!」
入れ替わりに、先ほど双眼鏡で見た将二人が、入ってきた。
「土方歳三殿、ですな?」
「如何にも。貴殿らは?」
「はい。拙者は、高順と申します」
「私は、臧覇と申します」
陥陣営に、八健将の一人か。
……丁原め、何処が信ずるに足りる者がおらぬ、だ。
「拙者の名を存じているところを見ると、丁原殿のお指図と見たが。如何?」
「はい。ご明察の通り、丁原様の遺命により、馳せ参じました」
「今後は、如何様にもご指示を」
「……そうか、では早速だが。我ら、丁原殿の遺志に従い、ここに参った。并州を頼む、との仰せであった」
「……はっ」
「無論、これは仮にお預かりしたもの。時が来れば、朝廷に返上せねばならぬが、今は民を安んじる事こそ第一。故に、このまま晋陽に進もうと思うが」
二人は、ジッと私を見る。
「何か?」
「……いえ、丁原様の書簡にあった通りの御方と、お見受けしました」
「いかに丁原様の遺命とは言え、この目で確かめるまでは……我ら、そう思っていました」
「では、貴殿らの眼には、私は合格である、と?」
「はっ。拙者、武骨者なれど、存分にお命じ下され」
「丁原様は、私共を見込んで、あのような遺命を下されたのです。ただ、民の上に立つ術は知りません。貴殿を信じ、従うとします」
「わかった。ならば二人とも、頼りにさせて貰う」
「ははっ」
私の知る二人の通りなのかはわからぬが、名の通った人物は、今のところ相応の才覚を見せている。
ふむ……。
何となく、私は恋に視線を向けた。
「……何、兄ぃ?」
「あ、いや……」
「……?」
首を傾げる恋。
恋の直属として、二人をつけるという手もあるな。
勿論、二人の人物を見定めて、の話だが。
「歳三様。そろそろ、出立しても宜しいでしょうか?」
稟だけ
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