第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十三 〜并州〜
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ょう」
やはり、この時代でも情報の重要性は変わらぬか。
……となると、山崎のような、諜報を任せる奴が必要だな。
しかし、奴のような者が、果たしてこの世界にいるであろうか?
もしいるならば、何とか我が麾下に招き入れたいものだ。
「主。私が参りましょう」
と、星が名乗り出た。
「星。何もお主が出向かずともよいではないか?」
「ふっ、愛紗よ。私は主が一番の槍。常に、先駆けとなる事こそ本望なのだ。主、宜しいですかな?」
「……よかろう。風、手の者を数名、星につけよ。情報収集は、お前が得意とするところであったな?」
「ではでは星ちゃん。すぐに選抜しますので、その間に準備していて下さいねー」
「わかった」
些か、大仰に過ぎるやも知れぬが。
ただ、星は腕は無論の事だが、身軽さでは我が軍随一。
それに、危機に陥っても切り抜けるだけの才覚を併せ持つ。
……むしろ、適任やも知れぬな。
軍は、粛々と并州に入った。
確かに、寒々とした印象を受ける土地だ。
「歳っち。誰か、向かってくるみたいやで?」
霞が、地平線の彼方を指さす。
「見えるのか?」
「ウチらは、遠目が利かへんとあかんやろ。騎兵は、速さが命、ちゅうこっちゃ」
「どれ」
双眼鏡で見てみると、確かに数名、此方に向かって来るようだ。
「お兄ちゃん、星なのか?」
「……いや、違うな。見慣れぬ将らしき男が二人。それに、兵が四名だな」
「どうするのだ、歳三。その人数では、どこぞの斥候ではないのか?」
華雄は、落ち着いて言う。
愛紗、鈴々、そして星に代わる代わる武を鍛えられ、私が将としての心構えを叩き込んだ。
結果、次第に変化が現れ始めた。
その一つが、このように冷静さを得た事。
もともと、武の素養は高い上、心根も素直だ。
ただ、誇りが高過ぎる上に、己の武を恃むあまりに、先走る傾向があった。
それを少しずつ、だが確実に変えていく事にしたのだ。
……今や、月は、暴虐の象徴ではない。
掛け替えのない、我が愛娘。
ならば、その身の安寧を図るのが、親たる我が務め。
詠が傍にいれば、悪辣な陰謀からは逃れる術もあるだろう。
だが、武はやはり、優れた者が傍にいるべきだ。
霞は武人としても超一流だが、彼女の本領はやはり、騎兵を率いての、将として在る事。
華雄には、月の親衛隊長として、常に傍にあって貰いたい。
それが、本人に取っても、一番だろうからな。
「いや、暫し様子を見よう。もし、不審な動きがあれば、その時は華雄に行って貰う」
「うむ、わかった」
頼もしげに頷く華雄を見て、月も目を細める。
「月。晋陽に着いたら、華雄の名の披露目と参ろう
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