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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
力脈
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も共通することだ。前から何人も連れ立って歩いて来た時に隙間を見つけてギリギリのところですり抜けるのは体捌きに通じる。暮らしの中に修行あり。『ベスト・キッド』の修行はちゃんと意味があるのだ。ワックスかける、ワックスとる。服を脱ぐ、服をかける、服を着る。あれも立派な修行なんだよ」

(暮らしの中に修行あり。重要なのは体重。重心の移動と手足の動きを連動させることで末端の手足に重みをつけさせること……)

 校内の清掃であちこち回っているとシン=ウォルフォードの噂ばかり耳に入ってきた。
 素直な称賛の声がある一方で、やっかみや僻み、嫉妬混じりの声も聞く。いや、むしろそれらの声のほうが多い。

(こうして働いていると色々な声が聞けるな。高見でふんぞり返っているだけではわからない、人々の貴重な意見だ。それにしても――)

 シンを筆頭としたSクラスの活躍を称え、模範にしようとする人の少なさだ。
 ただただ憧れ、羨み、見上げるだけ。そうでないものは萎縮し、妬み僻むだけ。

(嫉妬という感情は向上心の裏返しと言うから、まだのびしろかあるが、あきらめの声の多いことが気になる。なによりも我がZクラスの連中ときたら……)

 帰宅してからもカートは自己鍛練を怠らなかった。二度と負の感情に飲み込まれ支配されないよう、心身を鍛える。
 腰を落とし、壺を抱くように腕を前にしたままの姿勢で一時間ほど瞑想していた。
 これは立禅や馬歩と呼ばれる東洋武術の鍛練法で、内功と足腰の筋肉を鍛える効果がある。
 内功。つまり魔力制御のトレーニングも兼ねていた。
 ふと遠くから風に乗って人々の楽しげな声が聞こえてきた。どうやら使用人達が騒いでいるらしい。

「ホーゲンが戻ったか」



 リッツバーグ邸厨房。

「ただいま、料理長」
「おお、おかえり。虎の魔物を生け捕りにしろだなんて無茶な依頼だったそうだが、無事のようだな。ムスタール森林はどうだった?」
「川で捕れたナマズを煮つけにして食べてみたが、実に美味だった」
「そうだろう、そうだろう。あそこのナマズは絶品だ」
「それと今回ほど遠出したのは初めてだが、改めてこのあたりの街道は立派できちんと舗装されていると認識した」
「そりゃそうさ、なにせアールスハイド王国が誇る魔法学院がある都市だからね、みすぼらしい道なんて恥ずかしくて造れないよ。すべての道はアールスハイドに通じる、さ」
「異世界ファンタジーだから、ちょっと道を歩いているだけで熊やサーベルキャットに襲われて骨折熱や知減病になったり、街中でもドラゴンや吸血鬼が平気で襲撃してくるかもと思ってヒヤヒヤしていたが、道中は狼の魔獣に襲われたくらいで杞憂だった」
「ははは、魔匠(ハイマスター)はたまに変なことを言うね」

 もともと卓
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