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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
運命改変
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カートに降りかかる災厄を、『死』の運命を人形に移したのだ。
 類似したものはお互いに影響しあい、ひとつのものに起こったものは、似たもうひとつにも起こる。
 かつてひとつだったものはいつまでも目に見えないどこかでつながっており、たがいに影響をおよぼしあう。
 似ているものはよく似た力をもっている。
 丑の刻参りを例にあげると、人形は人間に似ている。そこにもとは人間に生えていた髪の毛を埋め込む。人形は人間に似ているので、傷つければ人間と同じように痛みを感じ苦しみをおぼえる。そこに髪の毛を入れることによって人間とのつながりが生まれる。
 もともと人体の一部であった髪はまだもとの身体ともつながっており、髪を入れた人形を傷つければ髪の持ち主も傷つく――というわけだ。
 このような考えは類感呪術と呼ばれ、世界中に存在する。
 宿命は変えられないが、運命は変えられる。
 カートは魔人になり、死ぬ運命から逃れることができたのだった。



 それから――。
 王都の警備局捜査官であるオルト=リッカーマンの卓越した推理力によってカートを洗脳、魔人化させた真犯人は帝国からの亡命者であり学院の教師でもあったオリバー=シュトロームと判明。
 『賢者の孫』シン=ウォルフォードの協力もあり逮捕まであと一歩というところまで追いつめたのだが、惜しくも逃げられてしまう。
 世間には『高等魔法学院で魔人が出現し、偶々居合わせた英雄の孫、シン=ウォルフォードが魔人を討伐した』とだけ公表され、シュトロームの正体やカートが魔人になったことを知る者は少ない。
 そのカートも事情を知る人々からは被害者としてあつかわれ、彼や彼の家が咎められることはなかった。
 罪を問われるのならやすやすと魔人の侵入をゆるし、あまつさえ魔法学院の教師にまでしてしまった国の責任である。
 下手な追求をしては自分の首が飛ぶことになりかねないと、上層部(おえらがた)も諸々の事を不問にふすことにした。
 とはいえすべてが元通りとなったわけではない。
 洗脳されていたとはいえ学院内で数々の問題を起こし、一時的であっても魔人化してしまったカートの処遇である。
 退学させるべきとの意見もあったが、『不完全な術で魔人になりかけた』者を野放しにするのは危険であり、しばらく学院で保護観察するという名目で在籍をゆるされた。
 しかし事情が事情である。元のAクラスに戻り、他の生徒達と同様のあつかいというわけにもいかなかった。

「Zクラス?」
「うむ。様々な事情で一般のクラスに編入することができない生徒達のために置かれた特殊学級だ。君はそこに移ってもらうことになった」
「…………」

 Zクラスなど聞いたことがない。
 調べてみると性格や人格に問題があるが、なまじ家柄や才能があるせいで落と
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