暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 21
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を通しているが、その中身が何なのかは誰にも分からない。
 いや、「誰も興味を示さない」が正しいか。
 職場(せんじょう)は違えど、激務を潜り抜けてきた猛者の集まりだ。生きる事に関しては人一倍執着心が強く、己の危機に鋭く、そして賢い。全員、避けるべき場面はしっかりと心得ていた。
 命短し護れよ我が身。
 触らぬ悪魔に暴虐(おしおき)無し、である。
 たまには立ってもいない煙を察知して笑いながら介入してきたりもするが、其処はそれ。人間には諦めも肝心だ。
 とにかく、開いた紙切れを見て嬉しそうに唇をにんまりと歪めるプリシラには近寄らないほうが良い……が、言葉も無く満場一致で採決された「生贄」経験者達の方針だった。
 「うっわ、気持ち悪っ。なに一人でニヤニヤしてんだ、クソババア」
 ごく一部には、空気を読ま(め)ない愚かな青年も居るけれど。
 「……人間ってねぇ、嬉しいコトや楽しいコトがある時に笑うのよ? クァにゃん♪」
 後々、施設の内部から奇妙奇天烈な悲鳴が響き渡った事は、改めて言うまでもない。
 学習、大事。 本当に。

 そうして一通り仕事を終わらせた後は皆で集まって昼食を取り、午後からは遊戯会が開かれる。
 文字の読み書きや芸術方面に適性を見出された子供達は、屋内で本を読んだり絵を描いたり歌を学んだり。
 体を動かす方面に適性が有ると判断された子供達は、屋内外で追い掛けっこや隠れんぼやチャンバラごっこ……に、見せ掛けた、実用的な護身術の訓練を「そうとは知らずに」受けていた。
 午前中は何処にも姿を見せなかったイオーネが指揮を執って子供達の戦闘力をそれとなく上げていく様子は、今まさにその道に居る騎士達の顔を微妙に強張らせる。
 純粋に遊んでるつもりでいる子供達が飛ばし合う冗談交じりの戦闘用語を耳に入れてしまうと、それだけで途轍も無く心苦しい。
 きっと、子供達に戦う術を仕込むのは道義的に見ても正しくはない。
 しかし、ならば誰が子供達の成長と安全を護れるだろうかと考えると、誰にも「正しくはない行為」を責められない。どんなに地位や権力や財力が有っても、人間に護れるモノの数なんてたかが知れている……そんな如何ともし難い無情な現実を、彼ら自身も嫌というほど実感してきたのだから。
 昼食後は二階の執務室に籠っていたプリシラも、開いた窓から暫くの間イオーネ達を観察し、唇を固く閉ざしたまま執務へと戻っていった。

 存分に遊び回った子供達が次に行うのは、洗濯物の取り込みや夕飯の為の下拵えだ。必要であれば買い出しに行く場合もあるが、今回はプリシラ達が持ち込んだ荷物で事足りている。
 なんだかんだで疲労困憊の神父達に付き添われながら厨房へ入り、調理器具を片手に作業を始める子供達。十歳未満の子供達は主に洗浄と片付けを、十歳以上の子
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