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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
魔人変生
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飛散したガラス片と共に人の姿をしたなにかが降り立つ。
 闇の気配に、陰陽の均衡の崩れた瘴気に、暴走する魔力に纏われたもの。鬼灯のように赤い目をした、鬼と化しつつあるカートだった。

「殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロコロコロコロコロロォォォォォ……シン=ウォルフォードォォォ! 殺してやるぅぅぅ!!」
「外法の技にしてやられたか。最初に見た時はあっさりと落ちたから、どこぞの雑霊にでも憑かれたものかと思ったが、もっと厄介な外法の者につけ狙われていたようだな」

 人の心には誰しも陽と陰がある。風の流れや川のせせらぎなど、この世界を形造る森羅万象にも同じように陽と陰がある。その陰に見入られた者は外道に堕ちると言われている。
 人ならざる、異形の存在へ。
 その法は外法と呼ばれ、人の世に、法眼のいた世界では今もなお密やかに受け継げられている。
 どうやらこの世界にも同様の外法が存在するようだ。

「だ、誰かカート様を止めてくれ!」

 使用人達が遠巻きに囲むも、その異様なありさまに恐れおののき手出しができない。

「ジャマを……するな、ドケ!」

 虫でも振り払うかのように手を動かすと、突風が生じて周囲を囲む人々をなぎ払う。
 ただの強風ではない。
 瘴気をはらんだ魔の風は人々の生気を奪い、身体を蝕み衰弱させた。
 庭内に生えていた草花が一瞬で枯れ果て、池の水は濁り腐る。
 これが、魔人だ。
 魔人の放つ、歪み、澱んだ、邪悪な気の作用だ。

「バン・ウン・タラク・キリク・アク。五行連環、疾く!」

 法眼が空を目がけて剣指で五芒を描き呪文を唱える。
 空中に輝く五芒星、セーマンが出現し、光の帳が下ろされた。
 堅固な呪的防御壁が法眼とカートを覆う。
 被害が拡散しないようとの配慮である。

「ダァれだァおまえはァァァ、俺の、邪魔ヲするキィかぁぁぁ!」

 カートが両の掌を突き出す。闇よりも暗く、血よりも紅い、氷よりも凍てつき、焔よりも熱い、負のオーラの塊が噴出し、法眼を襲う。

「サラティ・サラティ・ソワカ、オン・マリシエイ・ソワカ!」

 陽炎の如き結界に包まれた法眼の体が絶妙の間合いで押し寄せる闇の力をすり抜ける。返す刀で斬りつけたのは摩利支天の神鞭法。調伏相手を打擲する呪力の鞭がカートを打つ。
 物理的に傷つけるのではなく精神にダメージを、可能な限り『魔』の部分を狙って打ち正気に戻そうと試みる。

「おまえの中の悪を討つ! 荒療治だから悪心もろとも滅ぼされないように気をしっかりと持てよ」

 麻痺(パラライズ)誘眠(スリープ)で無力化させる手もあるが、根本的な解決にはならない。辺境伯の街で戦ったアイゼルも魔人であったが、完全に魔力を制御し
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